ソノホカss

写真
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二十一世紀から十年近く経っているというのに、いまだにフィルム式カメラにこだわっている。
撮っているカメラマンも近代ロボット技術の塊のくせに、ことカメラに関しては異様なこだわりを持っていた。
被写体は何気ない風景だったり、動物だったり、ロボットだったりするが、決して人は撮らなかった。
別にそこまで人嫌いというわけじゃない。
わけじゃないが、なんとなく居心地が悪くレンズ越しから見える世界から、わざと人を無くした。
今日の被写体は動物だ。
ここには世界中の動物が一同に集まっている。
何故なら

「フラッシュ!見て見て!キリン!」

自分の名を呼ぶのは外見が十歳前後の男とも、女ともとれる中性的な顔立ちの子供だ。

「ああ、キリンにはツノが全部で五本あるんだ。知ってたか?」

「え?そうなの?知らなかった。どう見ても二本しかないんだけど……」


その子供は柵にできる限り身を乗り出して目を凝らしたが、残り三本は見つからないらしい。

「ロック、お前なら目にズーム機能くらいあんだろ?サーモグラフィで皮膚と骨を見分けるとかよ」

言われてはたと気がついたロックは、忘れていたと照れ隠しに笑った。

「ああ、いつも忘れちゃうんだ。ズームを使えば見やすいのは分かってるんだけど」

言いながらも相変わらず柵にへばりついている。
どうあってもズーム機能は使わないつもりらしい。
こういうところがロックは人間に限り無く近いと言われるゆえんかもしれない。
戦闘用でありながら外見は人間の子供にそっくり。
皮膚も人工皮膚を使い、もしかしたら毛穴や汗腺があって、暑い日には汗をかくのではないかと勘違いしてしまいそうなくらい精巧に出来ている。
本当に人間の子供のような、あどけない顔つきのこいつに自分は一度破壊されている。

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