ソノホカss

悪夢からの救済
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悪夢を見る。
自分の周りをぐるりと真っ赤な炎が取り囲む悪夢だ。
炎はまるで生き物のようにうねり、天井や床を這い、色々な物を巻き込み自分までの距離を縮めていく。
自分は必死で大声を出すが、煙で喉をやられて声が出ない。
誰にも気付かれず、孤独を感じながら炎に焼かれて死んでいく。
そんな悪夢を見る。

「……スク!ドッジマスク!」

あだ名を呼ばれて目が覚めた。
視線の先には一人の子供、打飛一球(ぶちとびいっきゅう)が自分の上にまたがっていた。
悪夢を見た翌日は冷や汗が大量に吹き出す。
頭の先から足の先まで隙間なく巻かれた包帯が皮膚に張り付いて気持ちが悪かった。

「大丈夫か?うなされてたぞ」

一球は自分を心配しているのか、包帯だらけの全身から唯一見えている瞳を覗き込んだ。

「大丈夫だ」

一言そう言うと、納得したのか自分から飛び下りた。
今自分たちがいる部屋は、世界ドッジボール協会が用意したホテルの一室だ。
特別貧相なものでもなく、豪華なものでもない、まさに泊まるだけの施設といった所だ。
そこまではいいが、何故か自分と一球が相部屋になった。
唯一の救いといえばツインであることだが、他にもシングルの空き部屋はあるのに何故一球と一緒なのか。
一度ナビに問い質したことがあったが、協会の意向でチームワークを深める為、わざとランダムな組み合わせにした等と言われ、上手くはぐらかされた。

汗でべたつく体をなんとかしたい。
その為にはシャワーを浴びたいのだが、目の前では一球がつまらなそうに部屋にそなえつけのテレビを見ている。
この包帯の中は見せられない。
自分は換えの包帯を持って、無言でバスルームに向かった。

一球は自分を深追いせず、おとなしくテレビを見ていた。

***

「一球君、ドッジマスクと部屋一緒なんでしょ?大丈夫?」

ホテルでの夕食は用意されたバイキング形式のものだ。
普段から無駄な動きが多いせいか、すぐに腹が減るらしい一球は手持ちの皿に大量の料理を盛っていた。
そんな一球に耳打ちするようにドジ子が問うと、一球は何故そんな事を聞くのかという表情になり即答した。

「なんで?なんともないよ」

「ほんとぉ?だって、なんか怪しいし……」

確かにドッジマスクはその外見から非常に怪しい者と思われがちだ。
それはドジ子から見ても同じだった。
今回運悪く非常に怪しいドッジマスクと同室になった事で、何かあったのではないかと思って聞いたのだ。
だが、その本人からすればドジ子の心配など全くの無用だった。

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