Short story

□星空の下で
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──カツン。
窓の方で音がした。
机で数学の問題を解いていた結姫は、不審に思って手を止める。
──カツン。
また、音がした。聞き間違いじゃなかったようだ。
軽く溜息をつくと、立ち上がって窓際へ行く。
──ガラガラッ
窓を開けると、冷気が侵入してくる。冬を目前に控えたこの時期、昼間はわりと暖かいが、朝と夜は随分と冷え込む。
ぶるっと身震いをして下を見ると予想通り、幼なじみの浩平が手を振っていた。
窓に小石を投げるのは、小さい頃によくやった遊びに行くときの合図だ。
「何やってんのよ」
両肩を抱きながら小声で唇を尖らせる。
「なぁ、星見に行こうぜ!」
何を言い出すのかこいつは。
ニコニコして言う浩平に、結姫は呆れて溜息をついた。
「人の話聞いてる?だいたい、受験勉強しないで『星見に行こう』なんて何考えてんのよ」
現在高校3年生の結姫と浩平は、いわゆる受験生。
二人が受験するのは、県内でもレベルの高い大学だ。11月は模擬試験なども毎週あって、とても大切な時期。

勉強に集中したいって思うのが普通じゃない?
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