Short story

□星空の下で
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登って遊んだ木も、周りの景色も、あの頃のままだ。
「最近お前余裕無さそうだったから、たまにはこういうのもいいかと思ってさ」
得意そうに笑う浩平にありがとうと告げて、夜空を見上げた。
一面に広がる星々。
1つ1つが、まるで宝石のように輝いている。結姫は、空に向かって手を伸ばした。
「綺麗…。なんだか手が届いちゃいそう」
家の窓から見えるものより格別だ。
「でも…届かないんだよね……」
「結姫?」
手を下ろして俯く彼女に、浩平は首を傾げる。
「何かあったのか?」
顔をのぞき込んでくる彼に少し視線をさまよわせ、躊躇いながら結姫は話し出した。
「浩平。私ね、最近何のために勉強するのかわからなくなってきちゃったんだ」
毎朝学校に行って、放課後は塾に行って、帰ってきたら勉強をして眠る。毎日毎日、同じことの繰り返し。代わり映えのない毎日と、漠然とした不安。
私何でこんなことしてるんだろう?
何のために?
いい大学へ行くため?
いい仕事につくため?
考えれば考えるほど、先が見えなくなってくる。
自分は何のためにこんな毎日を送ってるんだろう?
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