BL
□冷たい優しさ
1ページ/3ページ
頬が切れるように痛く、目を開けると目の前は真っ白だった。
何をしていたんだろう。
…そうだ。
いつもみたいにイヴェールと盗みをやってたんだ。
それで逃げる途中、俺がハンドルしくじって…。
それから…
「イヴェールッ!」
俺は全てを思いだし、寒いのも忘れて飛び上がった。
「イヴェール!?」
真っ白な雪景色の中に、うつ伏せに倒れているのに気づいた。
俺は這うようにイヴェールのもとに行った。
「イヴェ…っ」
抱き起こせば、イヴェールの肌は冷たく、目を開ける様子もなかった。
「イヴェール!?」
ふとイヴェールの下の雪を見ると、紅い色が滲んでいた。
それはイヴェールの肩から溢れているらしく、赤い血がドクドクと流れていた。
「そんな…っ!…っ、死ぬなよ!おい!イヴェール!」
頬をペシペシ叩くが、反応がない。
冷たいイヴェールに、ヒラヒラと雪の結晶が降りてくる。
その度にイヴェールが冷たくなっていくような気がした。
「何だよこれ…!降ってくるなよ!イヴェを連れて行かないで!」
イヴェールに覆い被さるように抱き締めても、俺の間をすり抜けてイヴェールを冷たく包み込んでいく。