BL

□何もない世界で
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「そんなことはない。野球だって、仲間や戦う相手がいなくてはいけない」

優しい瞳で見るのは、屋上から見える広いグラウンド。
今、屑桐さんの目には何が映っているのか。
華武のみんな。うるさい十二支。強豪の7B。幕末くさい黒選。

きっと、屑桐さんはムカつく野郎も含めて、野球が大好きなんだと思う。
家族のためにやってきた野球が、今では屑桐さんの中ではかけがえのないものになっている。

そう考えたら、無性に悲しくなってきた。
所詮その中の一人なんだ、俺は。

屑桐さんの優しい瞳がゆっくりこちらに向けられる。

「…何より、お前がいない世界など、生きていても仕方あるまい」

…嗚呼。
俺、今なら死ねる。
こっから屑桐さんへの愛を叫んで、飛び降りれる。

「俺はお前と出会えて良かったと思っている。お前は違うのか?」

色んなものが込み上げてきそうで、必死に首を横に振った。

「俺、屑桐さんいなかったらそれこそ死んでる…!」

屑桐さんに抱きついて肩に顔を埋めると、頭を優しくなでてくれた。

「当たり前だ」

呆れたようた声も

時折見せる笑顔も

強くて優しい指も

かっこいい背中も



俺は全部好きなんだ




世界で二人だけになっても

俺はきっと生きてゆける






*END*
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