サンホラ
□笑え。
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僕が泣くと、彼女は笑う。
『ほらっ、泣いちゃダメだよ、エレフ!』
『だってぇ…膝擦りむいて痛いよぉ…』
『痛いの痛いのとんでけー!…痛いの治った?』
『まだ…』
『じゃあエレフはたくさん泣けばいいよ!そのぶんあたしがエレフの代わりに笑うから。その代わり…』
そう言ってミーシャはいつも笑っていた。
僕が泣くと隣で笑って、僕を泣き止ませてくれた。
『その代わりね、あたしがいないときはあたしのぶんも笑うのよ。あたしも、エレフがいないときは二人ぶん泣くから。ねっ』
笑ってね、エレフ。
「ミー…シャ…」
綺麗な綺麗なミーシャ。
月の光のように蒼白く輝いている。
その目はもう開かなくて。
「ミーシャ…?は…、笑えねぇよ、そんな冗談…」
月を手に入れたミーシャ。
穏やかな顔に涙のように水滴が白く光る。
笑ってるの?泣いてるの?
僕のぶんまで泣いてくれたのかな?
「ミー、シャ…」
『笑ってね』
笑え。
『あたしのぶんまで』
笑え。
『あたしは泣くから』
笑え。
『エレフは、笑ってね』
笑う?
「ミーシャァァァァァッ!!」
笑わない。笑うものか。
ミーシャはいる。生きている。
泣いていれば
また隣で──
*END*
(さよなら、私の片割れ)