サンホラ
□冬の伝言
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白い煙が空へ高くのぼる。
赤く染まった空が、一日の終わりの合図。
一番星が見えたら、急いで帰っておいで。
小さな息子に、母親はそう言って聞かせていた。
「早くっ、帰らなきゃ…っ」
7、8歳くらいの少年、イヴェールは、手に色とりどりの花を両手に溢れさせ、森の一本道を走った。
真っ暗な夜道は危ないから
笛吹き男にさらわれないように、早く帰っておいで
「笛吹き男さん…っ、危ないから…!」
母親に言われた言葉を繰り返しながら、必死に走る。
森を抜けると、そこは見慣れた村の風景。
イヴェールはホッと息をつき、ゆっくり歩いた。