その他
□恋心
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仕事が終わり、ジャンはこれから用事があるというので、リコは一人で帰ることになった。
「今日も、楽しかったなぁ」
仕事の内容ではなく、ジャンと一緒に仕事をして褒められて。
リコはそれだけで嬉しいのだ。
オレンジに染まり始める空を目を細めて見ながら、早く帰ろうと歩を進めたとき、向こうから見知った人物が手を振りながらやって来た。
「エミリオ…」
「リコ!」
エミリオは、嬉しそうに笑うと、リコが手に持っているケースに目をやった。
「ヴァイオリンのお稽古?」
「あ…うん…」
リコは彼を騙しているという罪悪感から顔を赤くして、そのケースを後ろにやった。
「あははっ。隠さなくてもいいよ。リコは僕とおんなじ、見習いなんだから、上手くなくても恥ずかしくないよ」
「うん…」
「あっ、ねぇ、今ちょっと時間空いてる?」
「え…?……少し、なら」
リコは腕時計を見て、少しなら良いだろうと、エミリオについていった。