サンホラ
□冬の伝言
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「ママっ!」
わずかに頬を赤くさせ、家の戸を開けて入る。
大好きな、ご飯を作っている母親の背中を見て、笑顔になる。
「イヴェールっ!」
母親の怒った声を聞いたとたん、イヴェールは身体をビクッと震わせ、縮こまった。
「遅くなったらダメと、いつも言ってるでしょう?」
母親はイヴェールの顔についた泥を落とし、銀色の髪を指でといてやる。
「こんなに汚れて…。ほら、汚れを落として、ご飯食べるわよ」
「あのね、ママ!」
「なぁに?」
「はい!」
イヴェールは手に持っていた花を、母親に差し出した。
「あ…」
差し出された花は、長い時間持っていたせいか、しおれかけている。