Gift
□僕が紡ぎ出す君へのメッセージ
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「獄寺っ!」
「なに」
「好き!」
「……馬鹿、んなの知ってる」
俺も好き、と言い返せたらどんなに幸せだろうかと、思った。
―僕が紡ぎ出す君へのメッセージ
***
獄寺、と俺を呼ぶ声がして、のろのろと体を起こすと、山本がベッドの横に腰掛けているのが見えた。
「……俺、」
「うん、獄寺さ、ねーちゃん見たらぶっ倒れちゃったのな、覚えてる?」
「……微妙に」
辺りを見回すと、ここが保健室なのが分かった。シャマルがよく許したな、と思っていたら山本がそれを察したのか、シャマルせんせーは出張中なのな、と笑いながら教えてくれた。それは悪戯が成功した餓鬼のように見えた。
「今、何時」
「んー、5時ちょっと過ぎた位?」
「…部活は」
「サボっちゃった」
大好きな野球をサボってまで俺を見ていたのか、と思うと少し胸が苦しくなった。俺はこいつに好きだと伝えた事さえないのに、こいつは俺の為に一番好きなことを犠牲にしているのだ。
「……十代目、は」
「ん?ツナなら小僧に呼び出されてたからもう帰ったんじゃねぇかなー」
「あぁ、リボーンさんに……」
十代目をお送り出来なかったのは残念だがリボーンさんがいらっしゃるなら大丈夫だろう。俺はもう学校に残っている理由がなくなったから、帰ろう。
そう考えて立ち上がると少し立ち眩みがした。ふらりとよろけた体を山本に支えられる。不覚だ。
「獄寺、大丈夫か?あんま顔色良くないのな」
「…平気だこれくらい」
「もうちょっと寝てれば?別に急いで帰る必要もないだろ?」
ゆっくりと再びベッドに横たえられると、山本が優しく微笑んでいたから、余計に胸が痛くなった。
「―――なんで」
「へ?」
「なんでお前はそんなに優しいんだよ」
「なんでって、そりゃ獄寺が好きだからに決まって、」
「俺、言ったことない」
「え?」
「山本に、言ったこと、ないのに」
言えるのならば大声出して伝えたい。好きだ、というたった3文字を言うだけなのにプライドが邪魔をして、言えないのだ。
一度として言われた事の無い好き、を何故こいつはこんなにも信じる事が出来る?俺はこいつに好きだと言われてやっと信じる事が出来るのに。
「分かるのな、獄寺照れ屋さんだから、言えないんだろ?俺は獄寺の傍にいても良いんだろ?それだけで分かる、獄寺も俺のこと、好きだってな」
適わない、と思った。こいつは俺の言葉に出来ない気持ちを全部知っているのだ。
俺の最大限の譲歩だ、これは。だからちゃんと聞けよ。
「…嫌いじゃないからな、お前のこと」
俺からの言葉に山本は目を丸くした後、とびきりの笑顔を俺に見せながら抱きついてきた。
「うん、知ってるのな、ありがとう」
どういたしまして、なんて言葉が浮かんだけれど場違いな気がしたから、別に、とそれだけを伝えた。
分かるんだろう?口にしなくても。
end
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