Gift

□心拍数が上がるのは
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「獄寺!!死んじゃやだ!」

「………は?」


俺の家に連絡も無しに押し掛けてきたそいつは開口一番にそんなことを抜かしやがった。




――――心拍数が上がるのは



いきなり俺に抱きついてきたかと思うとひたすら死なないでを連呼して俺の胸に耳を押し付けながら顔面蒼白になっている、山本。


「…頭おかしくなったか?」

「違う違う、獄寺の心臓、早いのな、だから獄寺死んじゃう」

「……どういう意味で?」


山本が言ったことを要約するとこんなところだ。生き物には生涯で何回心臓が鼓動を打つのかが決まっている。ハムスターだってライオンだって、人間とて例外ではない。寿命というのは心臓が決められた回数の鼓動を打ち終わったときの年数でもある。まあ事故や病気は例外だが。つまり、


「獄寺、心臓早いのな、そしたら早死にしちゃうのな」

「……あのなぁお前、」


誰が俺の心拍数上げてると思ってんだよ。お前だろうが。お前が抱きついてきたりしなければ俺の心臓だって落ち着いて動くんだよ、馬鹿じゃねぇのお前。


「……じゃあ俺ら別れたほうがいいの?」

「お前どんだけ馬鹿なんだよ」


俺から離れない山本を無理矢理引き剥がして逆に俺から抱き着く。おわっ、と山本が驚いたような嬉しそうな声を出してどうしたの獄寺?と聞いてくる。俺から抱き着くなんて今までほとんどしたことがなかったから。先程の山本を真似て俺も山本の胸に耳を押し付ける。どくどく、というよりは、ばくばくと心臓が脈打っていた。


「お前だって、早い」

「だって獄寺に抱きつかれたら嬉しくてどきどきしちゃうのな」

「じゃあ同じだろ、俺もお前も」

「え?何が?」


こいつはどれだけ物分かりが悪いんだ。俺が必死になって伝えているというのに。


「だから、俺もお前も同じだけどきどきしてんだろ」

「うん」

「だったら最終的には変わんないじゃねぇか」

「………あ、」


山本はやっと分かったようだった。やっと。俺がどれだけ恥ずかしかったのか分かっているのだろうかこいつは。


「獄寺、それって、さ」


山本の頬は赤かった。きっと俺はもっと赤いのだろう。



しぬまで、いっしょ?




end
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