お題
□08.退屈なオフ
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とても暇だった。物が少ない部屋はがらんとしていた。
――――――――退屈なオフ
テレビを付けてはいるのだが、俺は酷く退屈していた。俺は退屈の理由を知っていた。
退屈の理由の人物は今頃任務で忙しく動き回っているのだろう。デスクワークの苦手なあいつはほとんど本部に居ることはなかった。イタリアに留まっている期間自体少なかった。つまり家に帰ってくる回数も少なかった。
久しぶりのオフだった。外に出てみようかとも思ったが、面倒だった。俺を街まで引っ張って行ってくれるやつは今はいない。だから俺が家でごろごろと無駄な時間を過ごすのを咎めるやつもいない。
電話をしようかと、思った。
きっとあいつは今任務中だ。電源は切ってあるだろう。でも、もしかしたら、
机の上に置いてあった携帯に手を伸ばした。もしかしたら、もしかしたら。
発信のボタンを押す寸前で指を止めてしまった。もしかしたら、なんて。あり得ない。
酷く退屈だった。こんなことなら本部で仕事をしていようか。そうしたら任務を終えて帰ってきたあいつに会えるかもしれない。もしかしたらという小さな可能性に懸けるよりもそっちのほうがずっと良い気がした。何より、退屈しない。
スーツに着替えよう、そうして直ぐにでも本部に。
立ち上がった瞬間、携帯が震えた。
メール、誰からだろうか。もしかしたら、もしかして。
開いて内容を読んだ瞬間に俺は玄関に向かって走り出していた。もしかして、なんて、あり得ないと思っていた。でもメールには、あいつが。
ただいま。
玄関のドアを勢い良く開けるとメールの送り主が、いた。
「お、かえり」
退屈が飛んでいった瞬間だった。
***
最後退屈じゃない辺り……どうしてもお題から外れます。
2008.07.14.