お題
□19.息が続く限り
1ページ/1ページ
例えば恋っていうのは海に潜っているような、感じだ。
――――――息が続く限り
「獄寺のこと、もっと知りたい」
「もう知ってるじゃねーかよ?」
「うん、でも、もっともっといっぱい知りたいのな」
好きって気持ちに終わりってないんだなあ、と思う。
まるでそれは深い深い海の底を探すような。潜っても潜っても底は見えなくて、でも潜るにつれいろんなものが見えてくるような。
ぎゅう、と獄寺に抱きついて胸に顔を埋める。ほんのりと香水の香りがした。獄寺の香り。柔らかくて、俺を包み込んでくれるような。
「俺はいま、ゴクデラという海に潜ってるのな」
「…は?」
タイヘイヨウとかニホンカイみたいな感じで、ゴクデラって名前の海のなか。深く深くゴクデラのなかに潜っていく、獄寺を知っていく。
「獄寺に抱きついてるとすげー気持ち良いのな、眠く…なる」
「…寝れば、疲れてんだろ」
「んー、ねむい…」
獄寺が海ならきっと俺は魚。ゴクデラに包まれて眠るサカナなのかもしれない。
ぎゅうぎゅうと獄寺の胸板に額を押し付ける。眠い、とても、気持ちが良い。
こうやって、少しずつ獄寺のことを知っていったら、ゴクデラのなかに潜っていけたら、いつかは底までたどり着けるのだろうか。今はまだ暗闇の中に隠されている獄寺のことが、見えてくるのだろうか。
息が続く限り潜りたい。たとえ続かなくなってしまったとしても、もっと、
「獄寺のこと、知りたい」
ふかく、ふかく、きみのことを。
end
***
お題に沿えていない感は否めませんが、満足。
君に溺れるとか、そんな感じで。