お題

□07.絆
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「獄寺!!」


部活も終わって辺りは薄暗くなり始めた時刻。校門に寄りかかっていた俺の大好きな人。獄寺の回りだけ世界が違うみたいに白く輝いて見えた気が、した。



+++絆


「おせーよ」

「わりーわりー!部活長引いちゃってな!」

「帰るぞ」


二人肩を並べて歩く。辺りはもう暗闇に包まれていて、所々に頼りなさげな街頭の灯りが見える。人はいないようだった。


「獄寺、手、繋ぎたい」

「は?寝言は寝て言え、馬鹿」

「ははっ、釣れないのなー」


そう言いながらも俺が少し強引に繋いだ手を獄寺は振り払おうとはしなかった。
獄寺の少し冷たい体温が手を通して伝わってくる。きっと獄寺には俺の少し高めの体温が伝わってるはず。

獄寺を好き、って気持ちがこの手を通して体温と一緒に伝わってしまえば良いのに。いつも口で言ってるけど、それだけじゃ足りない。もっともっと獄寺に俺の気持ちを知ってほしい。


きゅ、と獄寺が手を強く握ってきたから俺はちょっとびっくりした。獄寺からそういうこと、してくるなんて滅多にない。


「こうやって、」

「ん?」

「手、繋いでたらさ、俺の考えてることがお前に伝わっていっちゃいそうだ」

「俺も、おんなじようなこと考えてたのな」


伝わればいいのに、呟くと、獄寺は顔を真っ赤にして伝わるのはやだ、と言ってきた。


「なんで?」

「…は、恥ずかしいから、」

「何考えてた?」

「し、し、知るかよっ!!」


顔を真っ赤にしてぶんぶんと頭を振る獄寺。まるでさっきまで考えてたことを忘れようとするかのようだ。可愛いのな、って言ったら蹴られた。でも手は離れないし離さない。


「俺はなー、獄寺大好きーって考えてたのな」

「ばっ……」


ただでさえ赤い顔を更に赤くしながら獄寺が俯いた。その時に獄寺が小さく呟いた言葉を俺は聞き逃しはしなかった。


「そっか!獄寺も俺のこと大好きなのな?」

「う、うるせぇ!!もう俺一人で帰るからな!!馬鹿!」


そう言いながらずんずんと歩いていく獄寺。


あ、手が、


「………」

「………」

「………」


獄寺がびっくりしたように振り返った。俺を見た。俺は獄寺を見つめ返した。少し気まずい沈黙だった。


「なんで、」

「うん」

「離したんだよ、手」


離すつもりなんてなかったんだよ、なんといいますか、成り行き?うっかり?いやほんとまじで!俺が獄寺の手、離しちゃうなんて!


「そーか、お前にとって俺はそんなもんか」

「え!?いや違う!誤解だってば!ついうっかり、」

「いい、俺まじでもう帰るついてくんなよバカ本」



さっきのずんずん、はどこいった?今の獄寺の歩き方はとぼとぼ、ってかんじ。
じゃ、なくて!


「待ってってば!もう一回、繋ぎ直そうそうしよう!な!」


がし、獄寺の手を握る。獄寺が軽く握り返してくれたからもう怒ってないのかな、と一安心。良かった良かった一件落着。


「あのなあ」

「うん」

「うっかり手ぇ離すなよ」

「ごめん」

「今日も仕方ないから許してやるけどな」

「うん、ありがとな」

「なんか奢れよ」

「安いやつにしてくれな」

「しょうがねぇな」


そうだ、俺がうっかり獄寺の手を離してしまうのは今日が初めてではなかった。
俺は何回も、ついうっかり獄寺の手が離れて行くのを見送ってしまうのだった。


「あー、なんかすっごい青春を謳歌してるよ俺たち」

「は?」


でも離れてしまう度に俺はまた獄寺の手を握り直すのだった。さっきよりも、強く、強く、離れないように。

でもまた俺はうっかり手を離してしまう、けれどまた強く握り直す。繰り返し。


そうしていったらだんだん俺らを結びつけている手ではないなにか、も強くなる気がするのだ。強く強く結びつけて離れなくなる気がする、のだ。


「今日は獄寺の家に泊まりたいのなー」

「どうせ嫌だって言っても来るんだろ」

「あ、ばれてた?」

「バレるもなにも顔に出てるんだよ馬鹿」



顔に出てるんじゃなくてこの手を伝って、通じれば良いのに。もしくは手ではないなにか、の力で。



ぎゅうと手を握った。俺は凄くいい気分だった。獄寺の手が温かくなったからかもしれないと思った。




***
お題をここまで無視した話をあぷしても良いのだろうか……。
絆はあれです、感じ取って下さると光栄です…///

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