お題

□誰にでもスキだらけ
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中学時代はたった一人の主君さえいれば良くて自分のことなんてどうでも良いみたいに突っ張って無茶ばっかりしていた彼も、さすがに10年経ったからなのか、自分の立場をわきまえた行動をするようになって。
でも。


+++誰にでもスキだらけ


「なあ獄寺」

「なんだ?」

「誰にでも笑いかけすぎじゃねぇ?」


そうか?眉を寄せながら獄寺が呟いた。さっきだって部下のこと誉めながら笑って、た!のに!
24にもなってこんなくだらない嫉妬を胸の中で渦巻かせているなんて知られたくないけれど獄寺はたくさんの月日を経てびっくりするくらい美人になってしまったのだ。

中学の頃からずっとずっと想っていた人がこんなにも綺麗になったのはとても嬉しいけれどライバルが増えるのは勘弁して欲しかった。
ライバルが増える要因を作っているのが本人だから更に困るのだけれど。


「昔はもっとツンツンしてたのにな」

「まあ俺は十代目の右腕だからな、」


心なしか誇らしげに見える獄寺の口元は少し上がっていた。また笑ってる!

そういう顔を見せるのが俺だけなら良いのに、そう思っても獄寺と俺は仕事仲間。贔屓目に見ても獄寺からしたら俺はちょっと長い付き合いの友人、くらいなんだろう。


この想いを伝えたとしてもそれは獄寺を困らせてしまうだけだと分かっている。
だって、

「なー獄寺そろそろ好きなひと教えてくれよー」

「は?誰がお前に教えるかよ」

「いーだろー?俺ら長い付き合いだし」


獄寺には好きな人がいるらしいのだ。


仕事中だ、部屋戻れよ。獄寺は素っ気なく言うと俺に背を向けた。そうやっていつもいつも話をそらして逃げてしまう。
ツナには教えてるみたいなのに俺には教えてくれない。しかもツナに教えたのが中学の時だというから俺の信用度ってどれくらいなんだろう…なんて。



遠ざかっていく銀色をぼんやりと眺めながら10年もあの色だけを追いかけてきた自分の一途さが少し可笑しくなった。
でもきっと、諦めないんだろうな、と思うとほんの少し胸が痛んだような気がした。





***
拍手連載第一段です^^
連載自体初の試みなのでどうなるやらですがなんとか完結できるように頑張ります…!

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