お題
□09.0がひとつ多い
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「ね、これいくらだったの?」
獄寺が言った値段は中学生にはちょっと、いやとても手の届かないような値段だった。
+++0がひとつ多い
ぽーい、と軽く投げ渡された小さな箱は見かけによらず重くて、貰った時はなんだろこれ、って感じだった。
「……えーと、ネックレス?」
「おー、お前この前俺のやつ欲しそうな目で見てただろ」
「あ、ありがとう」
「野球の道具はつよしとかが買ってくれんだろ?」
「あ、うん」
「じゃーそれでいいな」
「で、獄寺、これ」
いくらだったの?―――と、冒頭の文に戻る。
俺は別に欲しくて獄寺のネックレスを見てた訳じゃなくて、なんとなく綺麗に磨いてあんなーって感心してた訳で。あとこれは獄寺には一生の秘密だけど獄寺の首筋とか肌白いのなってちょっといやらしい目で見ていたからなんだけど。
とりあえずネックレスに限らずアクセサリーとかには今はまだ(多分これからも)興味を持つことはないと思う。
「た、高いのな……」
「別に良いだろ?俺の金だし、年に一回だし、」
誕生日。と小さく付け足された。そう、今日は俺の誕生日。ここは俺の部屋。獄寺とお泊まり会。
「いや、でもこんな高いもの貰ってもなんか…」
「あぁ?せっかく俺が買ってやったのを貰えねぇってのかよ?」
「や、そういう訳ではないけど、」
こんな、高いネックレス貰っても、
「ネックレスつけるような服ないし……てか、俺にネックレスって……な?」
似合わないだろ?と言うと獄寺は眉間にこれでもかというほど皺を寄せて俺を睨んできた。俺の手からネックレスを奪うと俺に抱きついてきた、と思ったらどうやらネックレスをつけているようだった。耳の辺りに獄寺の呼吸を感じてどきどきした。獄寺は俺の首にネックレスをつけると俺の前に仁王立ちして俺を見下ろしながら言った。
「に、あって…る!」
真っ赤な顔で俺に言うと鏡を突き付けてきた。俺が見るにはあんまり似合ってない気がするのだけれど、獄寺が似合うと言うなら似合うのだろうなあと思った。
「そっか、大事にするな、ありがとう」
「学校にしてったら果たすからな」
「分かってるって」
それって、二人の時だけつけろってことだろ?
俺には絶対買えない高いネックレス。なんだかさっきよりきらきらとしているような気がした。
実は獄寺の部屋にも同じものがあることを俺は知っていた。今度、お揃いのネックレスをつけてデートに行こう。鏡に映った俺の顔は幸せそうだった。幸せな気分だった。
***
お題に沿えていない!苦笑
誕生日おめでとう武!
(ちなみに書いた日は去年の武誕終わってからでお蔵入りになるかと思われた文なのです…笑)