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□リンドウ
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(剛が死んだってのを念頭に置くと読みやすいかと…)
互いに背を向けて横になる。
相手がまだ起きているのは、互いに、知っていた。
+++リンドウ
「寝ないの、隼人」
「…そっちこそさっさと寝ろ」
もう少しで日付が変わる。
眠っていられる時間などほとんど残ってはいないということは知っている、けれど少しでもいい、睡眠をとらなくてはいけないのは分かっている、互いに。
「…後悔しているか」
不意に獄寺が問いかけた。
長い沈黙、声を出した瞬間になにもかもがなくなってしまいそうな、錯覚。
この静けさに終わりはこないような、夜があけないような、このままずっと平行線を辿るような。
「…してるだろ」
永遠に続くかとも思われた静けさを破ったのは獄寺の低い声だった。
質問ですらない、断定。
「俺の責任だ」
ぽつりぽつりと言葉がこぼれ落ちる。背を向けているから、互いに顔は見えない。
ただ、見えないということが相手の表情が分からなくなることだったのは二人にとっては昔のことだった。
互いに互いのことが手に取るように分かる、それだけの時間を共有してきたことを知っている。
だからこそ互いの感情が痛いほどに伝わる、それは心臓に直に響いてくるように感じるほど。
「こっちの世界にお前を引きずり込んだのは俺だ」
背を向けている愛しい人の頬にはきっと涙が伝っているのだろう、山本は力なく微笑んで体の向きを変えた。
「…後悔していないと言ったら嘘になる、」
後ろから獄寺を抱きしめる。強く、力の限り抱きしめる様はまるでその背中を一生離すまいとするかのようだった。
まるで息をする人形のように動かない獄寺の背中を更に強く抱きしめ、山本は掠れた声で叫ぶように、呟いた。
「でも、俺は隼人と一緒にきてよかったって思ってる…!」
暫しの沈黙、
「…そう思ってんなら背中貸してやるよ、一番辛いのはお前だろうが、」
静けさを遮った獄寺の諭すような声を最後にまた静寂、否、ひっそりと悲しみにくれる二人の声が部屋を満たした。
end
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