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□つれてってよ!
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一緒にいたい理由が好きだからじゃあ足りない?だったら愛してるからにしようよ。離れないように抱き締めるから!
+++つれてってよ!
獄寺が俺に何も言わないで、どこか俺の知らないような、とおくに行こうとしているのはなんとなく、分かっていた。
初めて好きになったスポーツは野球、初めて好きになった教科は体育。初めて好きになった人は近所のナツコちゃんだったけれど、初めて愛したのは、獄寺だと、いうのに。
少しづつ、獄寺の部屋がからっぽになっていく。
置いてある物はあまり減ってない、けど。一緒にいた証がなくなっていって、心のない部屋になっていく。
部屋から、獄寺がいなくなっていく。
「獄寺ー、おそろいのマグカップどこいった?」
「割れたから捨てた」
「じゃーまたおんなじの買いに行こうな」
「いらねえよ、」
獄寺の一挙一動が、俺の心に突き刺さる。割れた?いらない?嘘つきだ。獄寺はあのマグカップをすっごく気に入っていたというのに。割ってなんか、いないというのに。どこかとおくに、あるのなんて知ってるのに。
あとどれくらい愛せば、一緒に、行ける?
「すきだよ」
すごく。あいしてるよ、とても。せかいで、いちばん。
「だからさ、獄寺」
連れていって!
獄寺が頷いてなんかくれないことは、百も承知だったけれど、だけど。
頷くわけないじゃあないか。これ以上お前を辛いことに巻き込みたくないんだから。
連れていってほしい理由は俺のことがすきだから?
あいしてるから?
俺がお前を連れていきたくないのだって、すきですきで、あいしてるから、なのに。
好きになればなる程、
あいしてる気持ちが強くなる程、
(守ってあげたいんだよ、)
(傷つけたくないんだ、)
end
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