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□拍手ログ
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誕生日おめでとう、という言葉と共に渡された真っ白な薔薇の花束と添えられたメッセージカード。
気障な真似しやがる、と思いながらも俺は頬が弛んでいるのを感じた。
+++白い花言葉
「なんだよ薔薇って、誕生日に薔薇って、」
「ん?いやさ、誕生日プレゼントって思い付かなくてな、バラって綺麗だし良いかなって思って、あと白くてなんか獄寺っぽいなーと」
「普通誕生日に花送るなら誕生花送らねぇ?」
「え、そんなのあんの?」
ばあか、口だけ動かすと山本はとてもショックを受けた顔をした。物知らずめ、お前、花言葉とか知らないだろ。
「獄寺の誕生花ってなに?」
「知るか、知りたきゃ自分で調べろ」
いーやめんどいし、と言うと山本は俺に抱きついてきた。勢い余って俺はソファに倒れる。うわ、押し倒されたみたいで嫌だこれ。
「じゃあお前、花言葉って知ってるか?」
「え、花に意味なんてあんの?」
はあ、大袈裟にため息ひとつ。山本は複雑な顔をしている。
「白い薔薇の花言葉、知ってて俺に送ったなら誉めてやったのに」
「なにそれ!え、どういう意味?」
俺に抱きつきながら山本が大声を出すものだから、俺はうるせえと頭を叩いてやった。本当に俺、今日誕生日なのか?
「教えてほしいか?」
「うん」
「ちょっと耳貸せ」
素直に耳を俺の口元まで持ってくる山本。俺が中々話さないからか、ちらちらと横目で見てくる。あ、ちょっとこいつ可愛いかも。
すぅ、と俺が息を吸うと山本は身構えた。どんな素敵な花言葉が降ってくるのだろうかと、わくわくしているのだろう、が、
「あーーーーー!!!」
「うわわわ!!」
山本はびくっとしたあと耳を押さえながら少し涙目になって獄寺ひでぇ、と俺を見てきた。俺はというとすっきりした気分で山本を見下ろしていた。あー清々する。
「獄寺ってなんでこーゆーことするかなあ、俺の耳が聞こえなくなったらどうすんの」
「あーあーはいはい、俺は薔薇を花瓶に移し変えるから」
特に反省はしていない俺は適当に返事をする。山本も別に謝罪の言葉を聞きたかったわけではないだろうし。
机の上に置きっぱなしだった薔薇の花束をおもむろに持ち上げるとひらりと何かが落ちた。メッセージカードだ。
そういえばまだ読んでいないと思って開けてみる、と。
ばさり、思わず手に持っていた薔薇を落としてしまった。後ろで俺を見ているだろう山本のにやけ顔が脳裏をよぎる。
「“私は貴方にふさわしい”だったな?」
「……くそ、」
いつの間にか俺の傍まで来ていた山本が足元に落ちている薔薇を拾う、んー良い匂いする、と呟いた後に俺の頬に軽くキスをしてから花瓶を探しに行った。
「…恥ずかしいことばっかしやがって、馬鹿」
カードをそっと机の上に置き、俺は山本の後を追った。きっと今の俺は真っ赤な顔をしているのだろうけれど、それでもいいやと思ってしまう程に俺は幸せだった。
ああそういえば後であいつを誉めてやらないと、なんて思ったけれど多分恥ずかしくてそんなこと出来ないだろう、でも、
(嬉しかったと言ったらあいつは喜ぶだろうか、)
***
とりあえず誕生日おめでとう隼人!
生まれてきてくれてありがとう隼人!
愛してるよ隼人!
…と、山本に言わせたかったなあ。なんでこんなお話に。なったんだ。