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□聴かせて君の音
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「獄寺くん」

「なんでしょうか十代目!」

「明後日、誕生日でしょ?俺ん家でパーティーしようと思ったんだけど、大丈夫?」

「あ…すいません、その日はちょっと野暮用がありまして、日本にいないんスよ」

「え!そうなんだ…どこに行くの?」

「あ、はい……イタリアに」



+++聴かせて君の音



イタリアの街を歩くのは久し振りだ。前回来た時はダイナマイトの調達しか考えていなかったからこうして街並みを眺めてなんて、いなかった。

去年の、恐らくこの時間帯に来たであろう花屋の前に立つ。去年と同じ花屋の店員が俺の姿を見つけると笑いながら近づいてきた。

「去年と同じで?」

「ああ」

「毎年、飽きませんね、この日になると必ず同じ花束を買いに来る」


話好きなのだろう、にこやかに花を包む店員はここ一年で景気が良くなったとかなんとか、俺にはどうでも良い事を絶え間なく話続ける。久々に聞くイタリア語が耳に懐かしかった。


「はい、お待たせしました」

「…おい」

「あ、一本サービスですよ」

「そうか」


また来年お待ちしてます、と店員が言った。きっと来年も再来年も、俺はここに来るのだろう。

そんな事を考えながら俺は花屋を後にした。



向かう場所は、ひとつ。




***


詳しい場所なんて、本音を言えば知らなかった。だから俺はこの辺りだろうと場所を決めて、毎年毎年、この日に此処へ、来るのだ。


適当な木の根本に花束を置く。そのまま俺は座り込んだ。服が汚れるのも気にしない。



何時間、経ったのかも分からず、ただひたすら俺はそこにいた。幽霊でもなんでも良いから、俺の前に出てくれば良いのに。見間違いでも、良いから、あのひとの面影を。




日が暮れ始めた。あと数十分で辺りは暗闇に包まれるだろう。でも俺は動こうとは思わなかった。意識はあの8歳の誕生日に向いていた。


あの日、会えなかった、ひと。






がさり、草が揺れた。


振り向けば、


「毎年ご苦労だな、スモーキン」

「は……跳ね馬…!」


夕日に照らされてキラキラと輝く金髪が綺麗だと、思った。






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