働きすぎだ、ごくでらは。


+++眠るきみに秘密の愛を


「獄寺、おはよー」

「ああ…」


もう朝か、と時計を見ながら小さく呟いた獄寺の目の下には立派な隈が出来ている。今日も完徹らしい。
そんな獄寺の両手にはまだまだたくさんの書類が積まれている。なんだか足元もふらついてる気がする。


「獄寺、ちょっと仮眠したら?酷い隈だぜ」

「寝てる暇があるように見えるか?」


本人も寝たいのだろう、不機嫌そうに睨まれた。俺はデスクワークは苦手だから代わってやるとも言えない。
ああ、俺の頭がもう少し良かったらなあ!
なんて嘆いても俺の頭は良くならない。俺に出来ることといえば、ツナに獄寺に回す仕事を減らしてもらうように頼むことくらいしかない。でも獄寺にたくさん仕事を回してしまっているのはツナも重々承知しているだろう。
とりあえず言うだけ言ってみようと思ってツナの元へ足を向けようとしたら獄寺に呼び止められた。獄寺から話しかけてくれるなんて!嬉しくて満面の笑みで振り返ると、


「十代目には余計なこと言うなよ」

俺の考えを見透かしたかのような獄寺の冷ややかな声が俺を突き刺した。

「え、あ…ああ、もちろん、」


余計なことじゃないのなー、なんて中学の頃みたいに軽いノリで返せば良かった、なんて思っても時すでに遅し。獄寺はふらふらしながら立ち去ってしまった。


と、思ったら、倒れた。


「獄寺っ!?」


慌てて獄寺のところに駆け寄る。たくさんの書類が床一面に散らばって凄い有り様だ。けど今はそんなことより獄寺!

「う……、」

とりあえず運ばないと、と思って横抱きにしたら獄寺がうっすらと目を開けた。
大丈夫かと思って覗き込むと獄寺と目が合った。
すると獄寺の顔がぼんと音をたてそうなくらい赤くなった。あれ、熱も出てるのか?


「だ、大丈夫だ!馬鹿降ろせ!」


俺の腕から抜け出すと獄寺は走って逃げ出そうとした、けれど床に散らばった書類を見て踏み留まったらしい。小さく舌打ちした音が聞こえた。床に屈んで書類を拾いだした。


とりあえず俺は獄寺を担ぎ上げる。拾った書類がまたひらひらと床に落ちた。獄寺は同い年なのに細くて軽い。多分最近は仕事が忙しくて飯もろくに食べてないのだろう。

降ろせ!と叫ぶ獄寺を無視して俺は獄寺を医務室まで連れていく。心の中では獄寺の細っこい腰に触れてどきどきしているけど、顔に出したら負けだ!と自分に言い聞かせる。このまま家に連れ帰りたいなんて思った俺は本当に馬鹿だと思う。
医務室までの道のりを俺は必死で走った。早く行かないと煩悩に負けてしまいそうだった。


「ほら、寝て!獄寺!」


ばふんと獄寺をベッドに寝かせると俺はそこらへんに転がっていた軽い睡眠導入剤を無理矢理獄寺に飲ませた。
馬鹿野郎、と言いながらも獄寺はちゃんと薬を飲んでくれた。獄寺も共犯者になってくれるみたいだ。
ほら、薬飲んだからもう眠くて眠くてしょうがないだろ?と俺がからかうように言うと獄寺はため息をついて目を閉じた。


「お前…な、」

「うん?」

「十代目にしっかり謝っておけよ」

「分かってるって」


書類残ってんだ、と呟いたのを最後に、獄寺はすうすうと寝息をたてだした。
飲ませたのは軽いものだったけど、獄寺が俺が無理矢理飲ませたからだと言い訳できるように。きっと獄寺もそれを分かって飲んだんだというなんだか分からない自信があった。
獄寺のためなら俺は悪者になったって構わないんだろうなあと思った。
獄寺は俺の気持ちなんか知らないで眠っている。こうやってまとまった時間を睡眠に使えるのは何日ぶりなんだろうなあと思った。獄寺は頑張りすぎだ。


「好きなんだよ、獄寺」


獄寺にそうっと囁く。
相手には聞こえていないと分かっているからこそすんなりと出てくる心の中に閉じ込めていた気持ち。
獄寺がこんなに頑張る理由だって分かっているつもりだ。だからこそ頑張ってと言えないしそんなに頑張らなくて良いんだよとも言えない。
だけど獄寺の疲れきった顔を見るのはあまりにも辛すぎるのだ。


せめて夢の中では仕事なんて忘れてくれればいいのに。
俺の夢でも見てくれたらいいのに。


触れたことのなかった獄寺の銀髪にそっと触れてみると胸がどきどきした。恋に恋をしているような中坊じゃあるまいし、と思いながらも髪から手を離せなかった。
ずっとずっと好きなんだよ。
言ってはいけない告白だけど、今だけなら、良いよな?


今ならバレないから、と思って獄寺にキスをしてみようと思ったけれど後から胸が苦しくなることは分かりきっていたからやめた。




***

拍手ありがとうございました!
そして前回からだいぶ日にちが空いてしまってごめんなさい><

***

ところで最近のブームがへたれ武です←
14でも24でもへたれてほしい……
そして天然
ブラック武も好きですがこの連載では獄寺が好きで好きでしょうがない武でいきます
とても、ありがちなかんじですが…;;すきです……

ではでは、のんびり連載ですがお付き合い頂けたら光栄ですv
ここまで読んで下さってありがとうございました!

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