リョーマ受け小説

□Tied Warei
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ダルい。
今日は全然部活に集中出来ない。
中学2年に進級し、生徒会の書記とテニス部部長を勤めている跡部。
それなりに疲労も溜まっていた。
「跡部、今日はもう帰って休んどき?」
「そうだな...後は頼んだ。」
「任せとき。」
「すまねぇな。」

「じいやに連絡を...」
今日は車のメンテナンスで夕方まで車は使えない。
ついてねぇな...。
跡部は重い身体を引き摺りながら歩き始めた。
「途中でタクシーでも...」
言葉を失った。
と通りかかった公園のベンチに、美しい少女のような少年が座っていた。
服もそうだが、その少年の周りごと、時代が違うような空気が漂っていた。

「よぉ。一人か?」
訪ねると少年は周りを見渡す。
「お前だよ、其処の着物着たお前。」
「...っ俺...!?」
「なにそんなに驚いてんだ。此処にはお前と俺しかいねぇだろ。」
少年は驚いた顔で俺を眺めてから、そうだね。と言った。
「名前は?」
「リョーマ」
「リョーマか。こんなところでなにしてんだ?」
「別に。ただ待ってるだけ。」
親とでも待ち合わせているのか。
「俺は景吾だ。」
「ふーん。で、何の用?」
「用...。特にねぇが。」
「クスッ、何で話しかけたの?」
笑った顔もとても可愛らしい。
それから二人は話が弾み時間が経つのを忘れていた。

「おっと、もうこんな時間か。急に話しかけて悪かったな。」
「俺も楽しかった。」
「また、来てもいいか?」
「うん。またね、景吾。」
「あぁ。またな。」

身体が重いことも忘れ急いで家へと向かう。
そういえばリョーマは親と会えたのだろうか。次いつ会えるか楽しみにしながら帰宅した。

次の日からも跡部は暇があれば通っていた。
桜散る中、まるで二人は恋人同士かのように。
「跡部、最近調子良さそうで安心したわ。」
「そうか?そういえば身体が軽いな。」
これも楽しみが出来たからか。
また今日もリョーマのもとへ行こう。
跡部はすっかりあの「葉落(ようらく)公園」の常連となっていた。
「景吾、テニスってなに?」
「お前テニス知らないのか?テニスっていうのは...」
「へぇ、楽しそうだね。俺にも出来るかな。」
「俺が教えてやるぜ!お前とならきっと凄く楽しい!!」
「ん。ありがと。」

「跡部やないか。どうしたん?

一人なんて珍しい。」

「忍足?なに抜かしてやがる。俺様は一人じゃねぇ。」
「!!跡部...やっぱまだ疲れとんのや。明日の練習も休んどき。」
「おいっ、忍足!!」
忍足はこらアカンわ。と言いながら去って行った。
「景吾...」
「アイツ、目がおかしくなったのか?」
「違うよ。あの人は正常。特殊なのは景吾の方だよ。」
「どういう...っ!」
リョーマの肩を掴もうとした手は空をかいた。
「俺はこの世界に、存在しない。」
自分の手を信じられないと、凝視していた。
「ってことは、お前...」
「うん。幽霊だよ。」
今までのことか走馬灯の様に流れる。
出会ったあの日からずっと... あのときも、あのときも。
ずっと俺は

一人だったっていうのか...?

「何で直ぐ言わないんだ。」
「俺は幽霊ですって?そう言ったら景吾、信じてくれた?」
「............っ。」
「ゴメンね。俺楽しかったんだ、景吾と話すのが。毎日来てくれて、凄く嬉しくて。」
「リョーマ...わかった。」
「え?」
「俺の背後霊になれ!」
「は!?」
「お前は幽霊だ。他のヤツには見えねぇ。ずっと一緒だ!!」
リョーマは首を横に振ると、左手を掲げた。
「手枷...?」
「此処は昔、吉原だったんだ。」
「吉...原」
「家賃の取立てに親は俺を差し出した。よくある話だよ。」

「じゃあ、待ってる人って...」
「もうとっくに死んでるんだ。だから会えない。でも、その人景吾にそっくりなんだ。」
「俺に...?」
「うん。勇之助さんっていうの。俺はあの人を、愛している。」
ズキン、と心に刺さる。
愛してる、か...。

「赤い檻の中からその人が見えると嬉しかった。ほら、景吾がこの公園に来る時みたいに!」
「でも、お前がこうして此処にいるってことは。」
「うん。会えなかったからね。待ってたの。そしたら地縛霊になっちゃった。」
あきれたように言うが、声は悲しみを帯びていた。

「勇之助さんは遊郭に来れるようなお金は持っていなかった。
俺は値段を上げられてたから、夜しかお客は来なくて。
昼間は一人だった。その時だけが勇之助さんと話せる時間だった。

俺が死ぬ少し前かな。勇之助さん、ずっとお金貯めて、一回だけ、繋がる事が出来たんだ。」
頬を赤らめて笑う姿は本当に嬉しそうで。
「身請け出来るようにお金貯めて、迎えに来る。って。」
なんて悲劇だ。
「他の富豪に身請けされた。だから俺は、
息を止めた。
勇之助さんを思いながら。不思議と苦しくは無かったんだ。」
「リョーマ...」
「景吾、俺、景吾に会えて良かった。」
「俺もだ。リョーマ...」
二人の唇が重なる。
柔らかい......
柔らかい!?
「今...っ!!」
「出来ちゃったね。クスッ」
困惑してる跡部に微笑む。
「景吾、俺、生まれ変わったら景吾と出会いたい。」
「そうだな...そしたら俺がリョーマを貰ってやる。」
リョーマの身体が透けていく。
「リョーマ...」
「もし出会えたら、テニスってやつ、一緒にしようね。景吾、愛してる。」
そういってリョーマは消えてった。成仏したのか。
跡部はしばらくベンチから離れられず、リョーマとの事を思い返していた。

家に帰ってじいやにたずねる。
「江戸の中盤頃に勇之助というやつがいたはずだ。調べてくれ。」
「勇之助...?少々お待ちください。」
そういってじいやが持ってきたのは
跡部家の家系図。
いやいやまさか。こんな偶然。
「あった...」
そのなかに名前はあった。
そして、葉落公園とは、江戸時代に同じ場所にあった「遊楽」という店から取ったものだと知った。
時を越えて俺達は...。


春。俺は中学3年に進級した。
正直リョーマの事を忘れていた。
「跡部、また春の陽気に捕らわれるんやないで?」
「ぁあん?何言ってやがる。」
「忘れたんかい。ま、ええけど。
それより............
何や跡部、恋でもしとるんか?」
「な、何言ってやがる!!そんなんじゃねぇ!!」
「跡部、部室に来い。」
榊監督から呼ばれる。
「青学と合同練習を組んだ。」
............
「相手は青学かいな。」

............
「どーせおチビのやつ、自分の番終ったからって校舎裏で壁打ちでもしてるんじゃにゃい?」

............


すべては繋がる。一本の糸のように。人れぞれの意図によって。


俺が思いを寄せているやつ、越前に話しかけたら。
越前は、リョーマは言った。
「用もないのに話しかけたの?変な人。それより俺と、試合やんない?」
テニスラケットを向けて不適に笑う。

繋がっているんだ。全て。


目が覚めると自分の部屋だった。
ベッドで昼寝していたらしい。
腕の中には愛しいリョーマ。
「景吾、やっと起きた。いくら蹴っても起きないから。」
「寝てる恋人蹴るやつが何処にいるんだ。」
「此処にいるでしょ?それより、何の夢見てたの?」
「ぁあん?...忘れた。」
「なんだよ。凄く嬉しそうな顔してたから。」
俺はいま、幸せだ。

「俺も、愛してるぜ。リョーマ...。」
おでこにキスを落とせば
なんだよ急に。と赤くなってしがみついてくる。
愛しい愛しい存在。

俺はいま

幸せだ............


end
ーあとがきー
跡リョって、いいな(蹴
The駄文☆
吉原ラメントにはまって、妄想が爆発したのは授業中。笑
読んでいただきありがとうございました!!

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