女郎花

□出会い
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いいところがあると幕府の役人に言われ、かれこれ30分ほど歩いた。
「おい」
そう呼びかけると役人は
「もう少しですよ、木更津隊長」
とニヤニヤとしながら答えた。気色悪い顔を見せるなと言って帰ろうと口を開いた瞬間
「ここですよ、ここ」
と役人が言った。役人が指差す方を見ると高い塀に囲まれた場所が見えた。
「ここって、若白の町じゃないすか!」
「なんだ、若白の町って?」
と俺が尋ねると
「知らないんすか、隊長!?若白の町って言ったら一見さんお断りの花街っすよ!」
と荒谷が興奮気味に答えた。花街と言う言葉に嫌な光景を思い出し俺は踵を返した。
「ちょ、隊長どこ行くんすか?」
「帰る」
唸るように告げると荒谷と役人が慌てて俺を止めようとした。
「ちょ、隊長ー!」
荒谷の役人の制止を振り払い足を進めた。
「花街なー、俺久々に来たわ」
「おい」
一縷が俺の肩を掴んだ。
「まぁまぁ、せっかく武田さんが連れてきてくれたんですし、まぁ入ってみましょうよ、滅多に入れる所じゃないみたいですし」
と言って俺を止めた。役人の名前は武田だったかなどとぼーと思っていると武田は若白の門を叩いた。
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