世界樹と冒険モノ。
□学院生活へ
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「…!ツキノ、後ろ!」
「えっ!?」
切羽詰まったハルニアの声。後ろを振り返ると、一匹だけ魔法を免れたのだろう、魔物が迫ってきていた。
「クイックオーダー!ルイス、頼むよ!」
「わかった…!」
クオンさんがスキルを使い、ルイスが私の前に躍り出る。
「ショックドライ……っ!?」
両手剣を魔物に降り下ろすが、何かに気づき、顔を強張らせる。
「―――その首、貰った!」
直後、クオンさん魔物の首を刎ねる。
流石にさっきの魔物が魚形とはいえ、目の前で今のは少しビビった。しかも何か、クオンさんの目付きが違ったように見えたし……
「ツキノ、大丈夫!?怪我とかない?」
「ええ…大丈夫よ。ルイスとクオンさんが「ごめんなさいっ!」え!?」
今度はハッキリとした声でルイスが頭を下げてきた。いきなりのことで正直戸惑う。
けれど彼は今にも泣きそうな顔で、必死に頭を下げている。
「今のは…完全にボクのミスだ…。いつもの武器とは違うのに…っ!」
「…つまり…"少しのミスでも命取りになる"…か。」
思い出すようにカノンさんがそう呟く。その言葉にハルニア達が反応した。
「…その言葉……いつもユヅルさんが言ってた…」
「それ…ユヅルさんとトキワさんの教訓……」
クオンさんとハルニアが同時に言う。それにカノンさんが頷き、ルイスを見た。
「ルイス、お前を責める言い方になるが…今のは油断に近いだろう?アスラーガにいる間、タルシスで扱っていた戦闘スタイルは長い間していなかった。それのリハビリとして両手剣を使っているみたいだが……それでもまだ、違うんだろう?」
こくりと頷き、ルイスの表情が強張る。私とスティアは何も言えず、ただその言葉を聞いていた。
「なら、お前はしばらくアスラーガの時みたいに印術だけを使っていてくれ。ルカとやらが武器を持ってくるまで、だ。いいな?」
「…わかった……」
彼が頷くのを見て、カノンさんは私達を見た。
「スティア、月命。君達もだ。
学生とはいえど、君達も冒険者であるのは代わりない。冒険者とは、常に死と隣り合わせだ。もし、迷宮に転がっている死体を見たのなら、明日は我が身の世界だ。それだけは忘れないでくれ」
「…はい」
本物の冒険者の言葉は深く、重い物だった。
世界は違えど、冒険者であることは代わりない。例え蘇生スキルや魔法があっても、安心はできない。改めてそれを実感させられた。
「…はい!大切だけど堅苦しい話は終わり!今の僕達はクエスト中だし、待っている人もいる。だから、早く行こうか!」
勿論、カノンの教訓は忘れずにね、と微笑みながらクオンさんが言う。
「そうですね……。じゃ、今から気を付けながら行きましょう!」
『おーっ!』
皆の声が揃い、思わず笑い合う。
再び私達はモーディアル学園に向かって歩き出した。
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