世界樹と冒険モノ。
□天使と…
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「あ、だったら…その、合流するまで、僕がいてもいい…?」
「え、いいの?」
少し早口で言う少年。私がそう聞けばコクコクと頷いた。
でも…確かにその方がいいかも。一人で探索するよりは、他に誰かいた方がいいだろうし…。というか、一人で探索というのは余程の実力がないと出来る気がしない。
「そうね…、うん。そうしようか!よろしくお願いします!」
そう言って私が握手の為に手を差し出せば、少年は一瞬戸惑う。けれど、すぐに握り返してきた。
「こちらこそ…よろしく。」
こうして、一時的にだけど二人パーティを結成することになった。条件は、お互い仲間と合流するまで、というモノだ。それでも二人というのは少し心許ない。けど、一人よりは断然マシだ。
ちらりと少年を横目で見る。少年はスティア兄ちゃん達堕天使学科が使うような大きな鎌を手にしている。…あれが彼の武器と考えてもいいだろう。
(堕天使学科みたいな職業の人かな…)
堕天使学科といえば、鎌を使って、攻撃魔法や状態異常の魔法も使えるというものだったハズ。
「……進まないの?」
「ふぇ!?あ…そ、そうだね!」
気付いたら少年は先に進んでいた。って、この辺にもワープゾーンはあるから結構危ない!
「あ、あの!この辺ワープゾーンがあるから、気をつけてください!」
「え…そ、そうなの?」
少年は足を止め、辺りを見渡す。幸い、彼が通った所にはない。私はすぐに少年のそばに駆け寄った。
「はい。私はそれで仲間とはぐれっちゃったんですよ…」
「…仲間…。もしかして、冒険者?」
ちょこんと首を傾げながら少年はそう聞いてきた。
「ええ、まあ…まだ学生ですけどね。」
「学生…?」
「はい、モーディアル学園っていう冒険者養成学校で学生やってます!」
私がそう言えば少年は「へぇ…」と頷いた。
「…冒険者を養成する学校かぁ…いいなぁ」
「?」
小さな声だったけども、そう言った少年の表情はどこか悲しそうな物だった。…深く追求するのはよくないだろう。それに、お互いのことを知らなさすぎる。ツキノ達みたいに親しいわけでもないし…。
「天使さんは、」
「え?」
「天使さんにはどんな仲間がいるの?」
て、天使さんって…た、確かに私はセレスティアだし、間違ってはいないと言えばそうだけど、なんだろう…。こうも真っ直ぐで綺麗な目で言われるとなんか恥ずかしいんだけど…!
でも、質問されたんだし、ちゃんと答えないと。
「え、えっと…そうだなぁ、私はお兄ちゃんと一緒にパーティを組んだり、いない時は幼馴染やクラスメイトと組んだりしているかな。」
「そっか。いっぱいいるんだね」
「そう…ね。結構いっぱいいるわ」
少年に言われてみて、改めて考えてみる。スティア兄ちゃん、ツキノ、月詠さん、影波、未菜、ディアナ、レイアにクレーエやカルテ達……。本当に、色んな人達と会って、仲良くなったなぁ…。
「そうだ、あなたはどうなの?」
「僕?そうだな…。」
少年は立ち止まり、天井を見上げる。けれど、その目は天井を見ているのではなく、何かを思い出しているものだった。
「…僕も、信頼のできる大切な人達を組んでいるな。たまに、同じギルドの他のメンバーとも組むこともあるけど、みんないい人達だ」
「……そっか。」
思い出しながら語るその目は、懐かしむような、けれど真っ直ぐした物だ。