世界樹冒険録

□黄金の翼
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 ──第十一迷宮 枯レ森


「枯レ森ねぇ…色んな意味で懐かしい」

 長い金糸の様な髪を揺らしながら、僕の前を行く狩人の青年が呟く。

「あー…あのことですねぇ。確かに懐かしい。」

「あの時も色々あったからなぁ。まさか、今回はこんな形になるなんて誰が予想したのやら?」

 後ろから着いて来た医術師の少女と、橙がかった金髪の青年が、狩人の青年の言うことに同意するように頷いていた。

「確かにね…。あの時のような事じゃなくてよかったとも思えるな」

 周囲を警戒しながら聖騎士の女性も少し表情を緩ませて答えた。

 …トキワ、ハルニア、クロード、リーナの四人…一応マギニアには来ているというミナモという人。この5人はエトリアとハイ・ラガードを踏破した【ルミナリエ】というギルドの人達だ。

 この迷宮に踏み入れた時、まずハルニアが驚きの声を上げていた。…前の第十迷宮の時もオルフィが驚いていたように、ここも別の世界樹の迷宮の物らしい。
 一度マギニアに戻った時、ハルニアがこの迷宮の事を話した。そしたら…

「何それ、メッチャ気になるから俺達も同行していい?」

 …と、クロードから提案された。…本当にこの人、クオンの兄なんだろうか、というくらい性格が違うんだが…と思ってしまったが←
 そう思いながらも、知識を借りたいのは確かだ。そして数が多いのならそれに越したことはない。と言う訳で…彼らには同時攻略、という形で協力してもらっていた。
 ……少し、予想外の者もいたけども。

 そう考えながら、僕は先を行く少女…否、人の姿を取っている魔物を見た。

「………はぁ」

 別に、アクアやエルディアはいいんだ。トキワとクロード、リーナと同じパーティを組んでいるからな。うん。

 その……今回のメンバーは、普段組んでいる僕、オルフィ、ミゾレ、タルト、ハルニア。それとトキワ、エルディア、リーナ、クロード、アクア…そしてスイヨウだ。

 それにしても、何故スイヨウまで着いて来たんだろう?

 個人的な話だが、僕はどうもスイヨウが苦手だ。
 というのも、人の姿をしているとはいえ、明らかに思考が人間のソレとは異なる。そして、凄く乱暴、横暴、凶暴だ。…意味がほとんど同じだって?知ってる。けどそれくらいスイヨウはヤバいんだ、察してくれ←
 しかも女として扱った瞬間殺されそうになる。…なんというか、扱い辛い所為で近寄りがたいのだ。

「あの時の鷹がまさか、ねぇ…」

 思わず、というようにミゾレが呟く。そんな事言ったらスイヨウが怒るんじゃ…

「ああん?鏡の女、今オレの事を鷹って言ったな?」

 や、やっぱりーーーー!先を歩いていたスイヨウが振り返り、ギロリとミゾレを睨みつけている。

「ええ。言ったけど」

 そしてミゾレも動じてない!?
 いつもの澄ました顔で、スイヨウに答える。

「はぁ…まァ、アルカディアにいた時は確かに鷹の姿をしていたからなァ。そう言われるのは仕方ねェか。」

 けどよ、とスイヨウはミゾレに近づき──飛んだ。脚と腕を魔物の脚と翼に戻し、鋭い爪を彼女の喉元に近づける。
 
「見ての通り、オレは魔物だぜ、鏡の女。」

 ミゾレを見下すスイヨウの目は…獲物を見つけた捕食者の目付きそのものだ。
 周りにいたメンバーに動揺が走る。リーナはエンリーカやマキリを守るように盾を構え、タルトはオロオロしながらも、その目線の先にはスイヨウを捉えている。

「スイヨウ、」

「………」

 トキワが止めようと動きかけたが、ミゾレが静止するように、と無言で手を出した。
 ここでようやく、ミゾレは一切動じず、静かにスイヨウを見据えていることに気付いた。

 スイヨウの方もしばらく彼女を見下す。スイヨウから放たれる威圧が周囲をさらに静かにさせていた。…が。

「…その目、確かに違うが似ている。今まで気に入らねぇと思ってたが……あァ、気に入ったぜ、鏡の女!」

 そう言ってスイヨウはニィと笑った。笑うと同時に地面に脚を付ける。地に脚がついた時には人間の脚と腕に戻っていた。

 それを見て、周りのメンバーが安堵の息を吐いた。…勿論、目の前で見ていた僕も。

 

 
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