神速に矢と刃は踊る
□第一話 何の変わりない日常に感謝
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ぼんやりと教室の窓を開け、そこから空を仰ぐ。
…今日も素晴らしい程青い。むしろ憎たらしいくらいだ。
「…燈夜(トウヤ)、大丈夫?」
後ろから湊(ミナト)の声が聞こえたが…反応する気がしない。というか、どう反応したらいいのかわからない。
左手に持った紙を握りしめながらそう考えていた。
「………また能力学の成績、悪かったの?」
「ぐはぁ!」
が、湊にはあっさりバレてしまい、俺の心に槍がぶっ刺さった気がした。
そのまま窓の縁にだらりと腕を垂らすが、今いる教室が三階であると気づき、慌てて体勢を直し、改めて壁に寄りかかった。
「なんか…忙しないね」
「うるせぇ……」
湊に返した声は自分でも情けない程小さく、頼りなかった。
能力学……この望月学園高校で教えている科目の一つ。
文字通り、能力者が持つ能力を鍛える為、正しく能力を扱う為に学ぶ科目の事だ。
本来は妖魔と戦う為に作られたらしいが…もう何十年も前に妖魔は殆どいなくなったハズだ。
だが、能力を持った人間はまだまだ存在する。
その能力の制御や悪用を防ぐ為にも、この科目は現在も残っている。
…とはいえ、俺が持っているのは神速のみ。
俺は湊の様に魔術特化といった特化型ではない。
剣術特化じゃないが、剣術についてもやってみたが……上手くいかない。
普通なら、特化じゃなくてもある程度は出来るようになるハズなのだが…俺だけその……何故か向上しなかった。
……何故に!?
「えっと…本当に大丈夫?トウヤ…」
思わず頭を抱え、教室の隅に踞っていると心配そうな湊の声が聞こえた。
「……大丈夫…だと思いたい。」
ああ…また情けない声…!
その事に更にヘコむと、湊は苦笑した。
「きっと大丈夫だよ。いつか……必ず出来るようになるさ。」
「…そんな確証、ドコにあるんだよ…」
「何となくわかるんだよ。ボクは……。それに、トウヤはいっぱい努力してる。だから大丈夫。」
「………」
ね?と言うように湊は微笑んだ。
…コイツはたまにこう言う予言めいた事を言うことがある。
当たるか外れるかは…五分五分だが…いつも勇気づけられてきた。
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