いつかかえるところ
□04《まだ正体を知らない》
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「おう!クラサメおはよう!」
翌日の魔導院。
1組教室では朝から元気なリヒトの声が響く。
「ああ、おはよう。朝っぱらからよくそのテンションで持つよな」
「逆にこのテンションじゃなくてどうやって1日持たせるわけ?」
クラサメのひとつ後ろの席に座るリヒトは、頬杖をつきながら自分の椅子に座っていたが、クラサメが来たとともに机の上に身を乗り出すように座り、ひとつ前の席のクラサメに詰め寄る。
「なぁクラサメ」
「なんだよ」
「最近ゆめちゃん一段と可愛くなったと思わねえ?」
「……どうだろうな」
「その間はイエスと取る(w)」
表情や態度にこそ出さないが、リヒトは内心ウキウキモードだ。
クラサメのちょっとした反応が楽しくて仕方ない。
さしずめ自分もエミナと同様、やはりからかい目的なようだ。
「誰か好きなヤツでもいるのかもな〜。ほら、女って恋してるとキレイになるって言うだろ?」
「まぁ年頃の女の子だし、好きな奴くらいいるんだろ」
「俺さぁ〜、ゆめちゃんの事好きなんだよなー。可愛いし優しいだろ〜。俺の事も”リヒトさん♡”て慕ってくれるしさぁ」
「どう思うクラサメ?(w)」
「どう思うって…。別にお前が誰を好きでも関係ない」
「ゆめちゃんでも?」
「関係ない。何が言いたいんだお前は」
とか言って、めっちゃ顔不機嫌じゃん。
こいつ案外態度に出やすいんだよな。
おもしろ。
だんだんとクラサメの身に纏うオーラが明らかに冷たく重くなり始め、もはや”氷剣の死神”モードだ。
だが、そんなクラサメを見るリヒトもまた臨戦態勢だ。
もはやからかいではなく、売られたケンカを買っている状態。
そんなふたりの刺すようなオーラに、1組教室はただならぬ空気を漂わせ、候補生たちはとばっちりを受けまいと息を潜める。
「ほんじゃあ、本気になろうかな。もちろん応援してくれるよな」
「好きにしろよ。俺には関係ないからな」
「ふぅん。そうかよ」
この辺でケンカも終わりにしようとしたところで、再びクラサメが口を開いた。
「…けど、ゆめはお前みたいな奴好きじゃないと思うぞ」
クラサメのその言葉に、リヒトは吹き出しそうになるのを必死にこらえる。
好きにしろとか言っておきながら、諦めろと言いたいのか
。
しかもそれを怒りながら言うあたりに、リヒトはたまらず声をあげて笑った。
「ははは!!分かってるよそんなん!はーあ、やっぱお前おもしれーな」
「な、なんだよ急に…」
「いやいや気にすんな。お前が俺の事理解してくれてるのがわかって嬉しかったんだよ」
「……変な奴」
おもしろくなってきたところだ。
また少しこのケンカを続けてみようと彼は思った。
少し空気も和んだところで、ちょうど1組隊長がやってきた。