いつかかえるところ

□04《まだ正体を知らない》
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あの不機嫌な顔が忘れられない。





それだけ彼女に”本気”なのだろう。




それは兄心か恋心かは分からない。



だが確実に、彼の中の彼女の存在の大きさを知ることができた。







ここでひと手間かけちゃうのが俺の人の良さなんだよね〜。



人の良さと言うのか。
お節介というのか。
ただ遊んでるだけ、と言うのか。






1組の講義を終えたリヒトは、クラサメとは行動せずすぐに4組へ向かい、ゆめを探した。



おっ、いたいた。



どうやら友達と談笑しているようだ。



と、その教室を見渡していると、ある人物が目についた。


ん?あの男子候補生、ゆめのこと見てんな…。あいつもすきなんだな?


ナイスな情報を得たリヒトは、ゆめが友達と別れたところを見計らい、教室に入り声をかける。




「ゆめちゃん♪」



不思議そうな顔をして振り返ったゆめは、普段ここでは見る事のない彼の姿に驚いた。



「リヒトさん!どうしたんですか?ここに来るなんて珍しいですね」

「うん。ちょっと一緒にお勉強したいな〜と思ってさ。お誘いに来た」

「それも珍しいですね?うん、でも、いいですよ。クリスタリウムですよね?行きましょう」


ゆめはささっと荷物をまとめて準備をする。


そしてふたり肩を並べてクリスタリウムへと向かって行った。






「俺さ、勉強しないようにみえるでしょ?でも本当は超頭いいんだよ?マジで」

「そうなんですか?あ、でも確かにそうですよね。武術ばかり長けてても1組にはなれませんもんね。すごいです、リヒトさん」



参考書を広げ、ふたりで同じ机に腰掛けて勉強をする。

ただ、クラサメの時のように隣同士ではなく、向かい合う形だ。



しかし、これも単なるリヒトのお節介と言うなのクラサメへのケンカだ。

勉強する気は毛頭ない。




「ゆめちゃんさ、クラサメともこうやって勉強してんの?」

「え!?いえ、全然してないです。クラサメさん忙しいし、声を掛けるのも申し訳ないし…」


こりゃあ進展しないわな。
ふたりとも奥手なんだよ。奥手。
好きなら好きでガツガツ行きゃあいいんだ。
人生一度きりなんだしさ。


「たまには声かけてあげなよ。あいつ喜ぶよ」

「そうだと、いいんですけど…」



本当にオクテだ。
エミナがヤキモキするはずだ。





そこへ、なんともタイミング良くクラサメが歩いてくるのが見えた。



背を向けたゆめからは見えず、彼女は黙々と手を動かす。




「…!」



クラサメがそのふたりの姿に気付き、そこで立ち止まる。


リヒトはそんな彼と目が合うと、ニヤリと勝ち誇ったように笑い、挑発した目を向ける。



クラサメのむくれる顔をバッチリ見たリヒトは、たまらずまたケタケタと笑い出す。



「?リヒトさん、どうしたんですか??」

「ああ、いやいや、ちょっと面白いものが見えたからさ(w)」

「え?なんですか?どれですか?」



自分も見たいと言わんばかりに、ゆめはリヒトの視線をたどり、その”面白いもの”をキョロキョロ探していた。
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