いつかかえるところ

□04《まだ正体を知らない》
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くそ、リヒトのやつ…




クラサメは苛立っていた。


リヒトのあの挑発的な態度が気に入らないからだ。



あいつ、何で俺に対してケンカ腰なんだ。
別に好きにしたらいいんだ。
あいつが誰を好きでも、彼女が誰を好きでも
自分には関係のない話だ。


だが、リヒトと楽しそうに笑うゆめの姿が目に浮かぶ。





どんな顔で笑うんだろう。
どんな話をするんだろう。

あいつに触れるのか?
あいつに触れられるのか?


想像してしまう。ふたりが親密になる姿を。



リヒトの事は信頼しているし、もちろんいい友人だと思っている。

大切な友人の幸せは願っても見ないことなのだが、なぜだかそう一筋縄ではいかなかった。


もやもやが抜けない。
気になって仕方がなかった。










リヒトからの謎の宣戦布告から、よくふたり一緒にいる姿を目にする。



「あ!クラサメさん!」


彼女が声をかけて来ても、クラサメは目を合わせずそっけない態度をとってしまう。


「ああ、おつかれ」

それだけ言って、クラサメはそそくさとその場を立ち去る。



ゆめはそんなクラサメの姿に不安を隠せない。



「クラサメさん…?私、やっぱりさけられてますよね…」

「大丈夫大丈夫。アレ、拗ねてるだけだから。あいつ照れ屋だからさ、なかなか素直になれないのよ」


リヒトにそう言われたものの、ゆめは最近のクラサメの態度がひどく悲しかった。



しょーがねーな。俺がまたひと手間入れてやるか〜。
ほんと素直じゃねえなぁクラサメくんは。


リヒトはゆめと別れると、あの人物に迫る。





「よぉ。元気?」



声を掛けたのは、この間4組教室でゆめを見つめていた男子候補生だ。




「えっ…?はい、まぁ元気ですが…」

「オイオイ、もっと楽しく生きよーぜ。彼女でも出来れば楽しくなれそーか?」

「別に…今だって楽しいですが…」

「ああそう?いつもゆめちゃん見てるもんな」

「!!?」


リヒトの言葉に男子候補生は驚き、顔を赤くして俯いた。


「お前、告白しろ、ゆめちゃんに」

「え!?嫌ですよ!別に、今のままでいいんですから…」

「男じゃねぇなぁ…。いいから告白しろテメェ」



1組のリヒト • アオギリと言えば、荒くれ者として有名だ。

気の優しい4組からしたら、天敵とも言える人物。

男子候補生はリヒトの気迫に押され、気が乗らないまま強制的にゆめへの告白へ向かわされた。





リヒトは影からその様子を伺う。


よし…。ゆめちゃんに声をかけた。裏庭に行くつもりだな…。


そこでリヒトはCOMMでクラサメに連絡をとる。





『…何だよ。私用にCOMMを使うなバカ』

「まぁまぁ固いこと言わない。それよりさ、ゆめちゃんがお前の事探してたぞ?裏庭で待ってるってさ。行ってやれよ?」


『ゆめが…?
……分かったよ』



「なぁクラサメ」

『なんだ?』

「あんまりもたもたしてると、大事なもの失くすぜ?」



プツっとCOMMを切ると、後は関与することなくリヒトはブラブラと魔導院内に姿を消した。





そしてクラサメは

「もたもたって何だよ…」

と小さくため息を漏らす




「何の用だろう…。リヒトの事、相談されるとかか?」


そんな話では少し気が進まなかったが、重い足取りで裏庭へ向かった。




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