いつかかえるところ

□03《はつこい》
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日々少しづつ、ゆめの心にクラサメが住みつき始める。


クリスタリウムでの勉強会の翌日。

今日もゆめとエミナはリフレッシュルームでお茶をしていた。


何の他愛もない会話をしていたのだが、急にエミナの顔がにやけ始め、こんなことを聞いてきた。


「ねぇゆめ、昨日クリスタリウムでクラサメくんとふたりっきりでいたでしょー?」

「えっ?う、うん。偶然会ってね、一緒に勉強してたの。ほんとそれだけだよ。」

「なぁにちょっと焦ってるのかな〜?てゆーか、すごくカップルみたいだったよ?」


昨日の講義の後、エミナはゆめを4組の教室へ迎えに行ったのだが、そこにゆめの姿は無く、魔導院中探し歩いた結果
クリスタリウムへ到着し、仲睦まじそうに肩を寄せ合うふたりを発見したのだ。


それを見つけた瞬間のエミナは、ひとり超ハイテンションで影からその様子をバッチリウォッチしていた。



「カップルって、だからクラサメさんに失礼だってば。私みたいなのと噂にされたら迷惑だよ」


本人は無意識だが、明らかに落胆していた。
その様子をエミナは見逃さない。


「ゆめってば、人並み以上に可愛いんだからそんな謙遜しちゃダメ。もったいないよ〜?」


納得していないのか引き続き落胆の様子。
眉間にかすかなシワを寄せて何やら考え込む。


「それに、クラサメ君があんな風に誰かと親密になるなんてあり得ないんだよ?ゆめは特別なのよ」

「特別……だったら、嬉しいんだけど…」


決まりだ。
と言わんばかりにエミナは確信したように目を煌めかせた。




「ゆめ、クラサメ君のことが好きなのね」




ビクッと身体が跳ね上がった。


ゆめは目を丸くしてエミナを見つめたまま固まった。



「え……………」



「見ててわかるよ?クラサメ君の話すると、ゆめすごく幸せそうだし。それでいて、なんだが切ない顔もする。それって恋だよっ!」


「こい………」


「ねぇゆめ、ちょっとクラサメ君のこと考えてみて?」



ゆめは目を閉じて頭の中にクラサメを思い浮かべる。



自然とゆめの顔は綻ぶが

「すごく幸せな気分。でも、なんかちくちくする…」



うんうん。とエミナは、自分の感じたままの気持ちをゆっくりと紡ぎ出すゆめの話に耳を傾ける。



「なんだろ…胸がばくばくいって、苦しくて、楽しいのに悲しい…?
わたし、いままで誰かのこと好きになったことないから、だから……ねぇエミナ、これが”恋”?」


困ったようにエミナに疑問をぶつける。


「そう、それが”恋”だよ。ゆめ、いつの間にかそんなにクラサメ君の事好きになってたんだね」


「そっか、わたし、クラサメさんが好きなんだ…」


ゆめは始めて自分が恋をしていたことに気がつき、不思議な感情の正体を知った。


そう意識した瞬間、かあっと顔が熱くなった。

ゆめは始めてクラサメと会った時から今までを思い出した。

身体に触れたこと、目を合わせて話をしたこと、間近で彼の顔をみたこと、優しい笑顔を向けてくれたこと、肩を並べて時間を共有したこと。


様々なことを思い出し、その距離の近さに思わず恥ずかしくなってしまった。


「あはははっ!ゆめってばかぁわいい〜!」


ゆめは真っ赤になった顔を両手で押さえた。


すごく恥ずかしくなったが、今まで感じたことのない幸せで楽しい気持ちがやってきた。


「ねぇエミナ、好きな人のこと考えるだけで、こんなにウキウキした気持ちになるんだね…。苦手な講義も楽しみになってきた…。もう何もかもが楽しい」


頬を押さえながら言うゆめの顔はキラキラ輝いていた。
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