いつかかえるところ

□10《キミとの平行線》
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あれから3年が経った。



クラサメは、受け持つ組はまだ無いが、武官としてアギト候補生の育成に勤しんでいた。



月日は流れ、あの当時の候補生たちの姿は少なくなり。また新たなアギト候補生達が魔導院へやって来ていた。


次第にクラサメの噂も風に拐われ、【元朱雀四天王 • 氷剣の死神】という肩書きとその端正な容姿から、またしてもその人気に火がついた。





その頃になると、リヒト、エミナ、カヅサも候補生を引退し、それぞれの特色を活かすため、新しい道へと進んでいた。



リヒトとエミナは指揮隊長になるべく、武官に。

カヅサはその頭脳と知識を活かすため、武装研へ。



あの頃の風景はもう無く、5人が集まることは無くなった。

互いの忙しさもあるのだが、あの一件から自然と距離を保つようになってしまった。



距離を保つといっても、仲が悪くなったとか一緒にいたくないだとか、そんな事ではない。


良い意味で、大人な関係になったと言える。


今でも5人は信頼した仲間である事には変わりない。




ただあのふたりだけは、互いの気持ちを押し殺していた。




もうリヒトもエミナも口を挟む事は無く

「ここまでくれば自分たちの問題だ」

と。
心に残るものは有るが、口出ししていいレベルではなくなったようだ。







一方ゆめの方はというと、いまだ現役を続けている。
だが、それももう数日まで。


ゆめはアレシアからの推薦で、医務局へ行くことが決まった。
ゆめほどの治癒能力の高さを持つ者は、朱雀の歴史においても類を見ない。

所属は医務局になるものの、アレシアの配下になる。
ゆめにとってはこの上ない喜びだった。




そして、クラサメとの関係は。
付かず離れず。

いい先輩後輩関係、といった感じだろうか。

いまだにお互い好意を寄せているのに、一歩踏み込む事が出来ず足踏み状態だ。
だがそれでいいと思っている辺り、やるせない。



エミナがゆめに詰め寄った事があるが、


「いいの、近くにいれるだけで。これからは朱雀の為に生きるから」


と言うのだ。

健気とも言えるが、想い合うふたりの気持ちが通じ合わないのは、見ていて辛いものがある。
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