H×H(長編)

□No,1
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7歳の頃だった。

すべての始まりは





何もない森だった。
けど、とても幸せだった。




私は家に母と2歳年下の弟をのこして父と森へ散歩をしに来ていた。


「おとーさん!見てー」
7歳のケイトは隣で微笑んでいる人物に花を渡した。
すると、その人は「ありがとう。とてもきれいだよ」と嬉しそうにその花をみつめた。
「えへへ」


その人物の名はケンジ=エディーロ、ケイトの父親である。彼は本当に嬉しそうだった。
喜ぶ父の顔を見ると、私はなんだか胸がぽかぽかしてくる。


ガサッ
びくんっと肩をあげるケイト。
そんな私をみて父は「大丈夫。草むらから猫が出てきただけだよ」と言って、私の頭をやさしく撫でた。


“大丈夫”これが彼の口癖だった。その言葉には父の優しさが伝わってくる。
私は父のその言葉が大好きだった。


パーーーンッッッ


「ひっ!」
さっきのガサッという音とは比べ物にならないくらいだった。


「な、なに……?」
私は目をぎゅっと閉じて父に身体をできるだけ寄せ、父の服を掴んだ。そして、おそるおそる音の鳴ったほうを見た。

そこには知らないおじさん達が立っていた。
手には拳銃を持っていた。


「なんのようですか?」
父はその人達をまっすぐ見つめていた。

「あなたがケンジさんですね?ちょっと俺等と来てくださいませんかね」
おじさん達は片手で拳銃をぷらぷらさせて父をジッと見た。


「何故ですか」
「あなたにちょっとした用があるんですよ」
あからさまに苛立った様子でその人は持っていた拳銃をぶんぶん回した。


「いいからさぁ、さっさと来てくださいよ。……もし来れないようなら少々手荒な方法をしなくてはなりませんよ」


男は父に拳銃を向けた。
私はもう一度目を閉じた。
(怖い怖い怖い怖い怖い)
「なぁに心配いりませんよ。殺しはしませんから」


拳銃の引き金を引く音が私の耳に残る。ケイトは耳も塞いだ。
2分ぐらい経った頃だったと思う。


何かが私にかかった。


私は目をゆっくりと開いた。
そこには血まみれの父の姿があった。


見なくてもわかった。私にかかったのは父の血だ。
「……―…」
(何か私に言っている!)
耳を塞いでいた手をとる。私の耳に聞こえてきたのは……
――――早く逃げなさい――――
という父の掠れた声と
「おいまだ殺すなっていったろ!」
というおじさんの声だった。
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