H×H(長編)

□No,2
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「えっとキリコさんが言ってたのはここであってるはず……」
目の前にはなんの変哲もないただの定食屋。
「地図地図……」
ケイトはもう一度地図を見た。


丁寧に地図には“ココでステーキ定食を頼むときに「弱火でじっくり」と言う”とかいてある。
どうやらこの定食屋がハンター試験の会場で間違いないらしい。


「よし!」
ケイトは意を決して定食屋の扉を開けた。

カランカラン

店内に入ると店主の「いらっしぇーい!」と言う声と、美味しそうな香りにケイトのお腹がきゅうっとなる。
(う、そういえば家を出発してからご飯食べてないや……)


「ご注文はー?」
「ステーキ定食で」
店主はピクと反応してケイトをチラと見る。
「焼き方は?」


カランカラン


ケイトが「弱火でじっくり」と答えようとした時ちょうど定食屋の扉が開いた。


おもわず扉の方を見ると、そこにいたのは腕にはスケボーを抱えてた銀髪でつり目の少年。


「ステーキ定食を弱火でじっくり」
少年はケイトの注文を遮ったことに気付いてないのか店主に注文をする。


ケイトはハッと自分が注文の途中だったことに気付き「弱火でじっくり」と答えた。


「ではこちらへどうぞー」
女の店員さんがケイトと少年を奥の部屋へと案内する。
そこには美味しそうなステーキがジュウジュウと焼かれる音と香ばしいかおり。


二人が部屋に入り、席に座ると部屋がゆっくりと下がっていく。
(わ、エレベーターなんだ)
どうやらこの部屋ごとエレベーターになっているらしい。


「ねぇ、あんたもハンター試験受けんの?」
正面に座った少年がケイトに話しかけてきた。
「うん、そうだよ」
ステーキをナイフで食べやすい大きさに切りパクっと食べる。
一口噛むと肉の旨味と肉汁が口いっぱいに溢れる。


「へー名前は?」
少年も肉をがぶりと囓る。
「ケイト=エディーロだよ。君は?」
「俺はキルア」


キルアと名乗った少年はじっとケイトを見た。
「なんか顔についてる?」
ケイトが聞くとキルアは「別に、ただ子供なのに珍しいなーって思って」と頬杖をつきながらフォークに刺した肉を食べた。


「ちょっとね。それよりキルア君だって子供じゃん」
少し目を逸らす。
キルアはケイトが“ちょっとね”という言葉に言いづらいのに感づいた。


「ふーん、てか俺のこと君じゃなくて呼び捨てでいいよ、なんかやだ」
「わかった。キルアは何歳なの?」
「もうすぐ12。ケイトは」
「そろそろ14」
ケイトはまた一口肉を食べる。


「え?2歳上なの?見えねー」
ズバッとケイトに言い放った。
「それに、身長低いしな」
肉の刺さったフォークをぷらぷらさせ、キルアはケイトのハートに重い一撃をくらわせた。


チン
エレベーターがガコンと止まる。
どうやら試験会場に着いたらしい。

「行くか」
ケイトとキルアは部屋を出た。
着いた場所は地下道のようだ。


エレベーターから降りると周りの人達が一斉にこちらを見た。
数秒経つとその人達はふいと視線を逸らした。


(すごい……今まであった志望者とはあきらかに格が違う……!)
ケイトはゴクリと息をのんだ。
キルアをちらりとみると余裕の表情を見せていた。


自分を見ていたケイトに気づき「何?緊張してんのか?」とキルアはケイトを冷やかすようにニヤリと笑う。
「うん……すこしね」
すこし俯き自信なさそうに返す。
「そ」


すると豆みたいな人がやって来てケイトとキルアに番号のかかれたプレートを渡した。
ケイトが98番、キルアが99番だ。
「まだそんないねーな」
二人は服にプレートを付ける。


「じゃーねキルア」
ケイトがキルアと別れようとするとキルアは「え?」と驚いた顔をしていた。
ケイトもつられて「え?」と首を傾げた。


「別に一緒にやろーぜ、どーせ暇だろうし」
キルアは照れくさそうに目を逸らす。

「私、多分キルアの足ひっぱちゃうよ……それでもいいの?」


ケイトはキルアと一緒に試験を受けたら彼の足を引っ張ってしまうと思っていた。

だから、会場に着いたらキルアと一緒にじゃなくて一人で試験を受けようと考えていたのだ。


「いい。てか、もしお前が俺の足を引っ張りそうになったら先に行けばいいだけだしな」



「そっか!じゃあ私、足引っ張んないようにがんばるよ!」
手のひらをぎゅっと握りしめキルアを見て笑う。
「ん、ファイト」
ぽん、とケイトの頭に手を置く。




「うん!だから、キルアも一緒にがんばろ!」
ケイトもキルアの頭にぽん、と手を置く。
「ッ――!な、な……!」
キルアは予想外の事に顔を赤くして俯いた。
ケイトは「へ?ごめん」とのせてた手を放した。



「ったく、頭なでんなよな……は、恥ずいだろ……!」
顔を赤く染たまま俯いた。
(うわああぁぁキルアかわいい!)



「いやーキルアが弟みたいでつい……」
申し訳なさそうに謝る。
「お、弟……」
「うん、キルアとちょうど同い年だよ!」

キルアがショックを受けているのに気付いてないのか楽しそうに弟の話をすケイト。



すると中年のおじさんが二人に話しかけてきた。

「よっ!俺はトンパ。君たち新顔だね、よろしく」
トンパはにこにこして手を差し出した。



「あ、はい。よろしくお願いします」
ケイトがトンパと握手をするのをみてキルアは少しむっとする。


トンパはキルアにも手を差し出す。
だが、キルアはポケットに手を突っ込んだままでトンパを注意深く見た。

「てか、なんの用?」


「いや、お近づきの印にジュースをと思ってさ、ほら」
トンパはジュースを取り出すと二人に渡した。


(これなんか入ってないよね……?)


ケイトが不安そうにジュースを見ていると隣でジュースの蓋を開ける音。
隣を見るとキルアは何の躊躇いもなくジュースを飲んでいた。


その顔に変化はない。


大丈夫なのかと思い、ケイトの蓋を開けて飲もうとするとキルアがケイトの手を掴んだ。


「飲むな」


小声でそう呟くとキルアはにこっと笑って「俺にくれない?喉乾いてさー」


ケイトはキルアにあわせ「いいよ」とジュースを渡すと、キルアはまたぐびぐびと飲んだ。

(一気にたくさん飲んで大丈夫かなぁ)

心配そうに見つめると「別に平気だから気にすんな」と微笑んだ。



「じゃ、健闘を祈ってるよ」
トンパは手を振りながら人混みの中に去っていった。



「ね、キルアそのジュース何が入ってたの?」
ジュースの缶を指さすとキルアは「んー知らね。多分毒とか?」



「……大丈夫なの?」
「別に慣れてるから平気」

「そっか」


二人はいた場所から少し離れた、人があまりいないところへ移動し座った。



しばらく会話もなくやって来る受験生を見ていること30分程……
「ふわぁ……キルア、私ちょっと寝るね」
「んー」



ウトウトしていたケイトは1分程で寝てしまった。



(そんな眠たかったのかよ……)
隣ですやすや寝ているケイトをみて少し呆れる。



ケイトの隣でスケボーの調整をしているとき、ふいにキルアの肩に何かがあたる。


自分の肩を見るとそこにはケイトの頭があった。

キルアが起こそうとすると
ケイトは気持ちよさそうに寝ていた。



(……起こすのもアレだしこのままでいいか)
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