上条当麻と一方通行
□掴めない距離感
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授業中も一方通行のことで頭がいっぱいで、ろくに話をきいていなかった。
小萌先生を泣かせそうになってしまったことについては深く反省する。
「つっても一方通行のことしか考えらんねぇんだもんよっくそっ!」
放課後、鞄を肩にかついでぷらぷらと上条当麻は帰宅していた。
一方通行とまた会いたい、話がしたいというのもやまやまだけど、如何せん彼の素性は全く知らない、謎だらけである。どこに住んでいるのかなんて想像することもできない。
「そうだ、アイツ缶コーヒー好きなんだよな…………?スーパーとかはぜってー行かなそうだし、コンビニとかいったら偶然会えたりしませんかねー……」
そう考えてちょうど帰り道にあるコンビニにふらっと入ってドリンクコーナーに行くも
「ま……………いるワケねえな!」
白い彼の姿はなかった。
第一、上条の不幸体質を考えたらいる方がおかしいのだが。
というか体質うんぬん以前に、この広い学園都市でそうそう彼と出会えるはずがなかった。
「う〜〜〜〜〜〜あ〜〜〜〜〜、あうえあえーあ〜〜〜」
行き場のない感情が爆発しそうだ。一人であうあう言っている上条を店員さんが怪しげな目で見ている。
「…………そーいえば」
突然思い立ち上条は彼の携帯を開き電話帳を出す。あ行に登録された一方通行のアドレスを出し
「でんわ……………………しちゃってもいいんですかねぃ?」
街の中を闇雲に探すより、一方通行自身に居場所を聞いた方が手っ取り早い。
当たり前のことだが、彼の居場所を聞き出すなんてことが果たしてできるのだろうか。
震える指を電話番号のカーソルに合わせ、発信ボタンに手をかける。
ぱぴぽ、ぴぴぴぴ……と無機質な音が響いた後、トゥルルルートゥルルルーと呼び出し中の音が流れる。
破裂しそうなほど心臓が激しく脈を打つのを感じるが、彼にそれを止める術はない。
何回目かの呼び出し音のあと、ガチャリと音がなり
「……………なンの用だァ、三下…」
待ち望んでいた、一方通行の声が響く。昨日分かれてから24時間もたっていないはずなのに、久しぶりにしゃべれて嬉しいとすら思う。
「っ、あ、あぁーー、よぉー一方通行」
「………よォ」
よぉ、といったらよォ、と帰ってくる。意外なところが律儀なんだなぁと思いながら
「いやー、今俺どうっしても一方通行に会いたくなっちまって、な?日曜日まで待てないし、今暇だからよかったら少しでも会いたいなーとかね、思ったりしてたんですよー」
「………………ふン」
とても小さな吐息だったけれど、すっかり一方通行色に染まった上条の頭は着実に彼の声を拾い上げる。
「というわけで、一方通行さん。今どこにいるの?教えて?」
「……コンビニ」
どうやらコンビニにいるかもしれないというのは当たっていたようだ。
「いっやどこのコンビニかわかんねーよ?!この学園都市内だけで何個コンビニがあると思ってんだよ!」
「……ハッ、引き当ててみろよ」
無理ですぅー、早く居場所を教えてくださいーと根をあげたかったけれど、とりあえず学生寮までの道のりの間にあるもう一つのコンビニを目指して歩き出した。
「引き当てたら上条さん褒めろよ!?超褒めろよーーーっ!?」
「………わァったよ」
たらたら電話しているうちに二つ目のコンビニにつく。まず真っ先にドリンクコーナーを覗くがそこにも当然一方通行はいない。
「は〜〜〜ぁぁ。やっぱみつかんねーって」
ヤケクソ気味に電話口にぼやいた。すると
「ハハッ、三下カミジョーは俺を見つけることさえできないンですねェーーー」
声が、真後ろから、肉音でつむがれた。
ぎょっとして振り向くと
「よォ、三下クン?」
買い物を終えブラックの缶コーヒーを手に提げた、一方通行がいた。