上条当麻と一方通行
□アクアリウム
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あらかじめ待ち合わせ場所、待ち合わせ時刻を決めていたのが仇となった。
つい、一方通行と唇を重ねてしまったあの日以降一度もメールも電話もしなかった。
火曜日、水曜日、木曜日、金曜日…………刻刻と過ぎてゆく日々、一方通行からの着信を知らせてくれない携帯電話。
もう絶交されたんじゃないかと思った。待ち合わせ場所にも、来てくれないんじゃないか。
けれど、それは上条が待ち合わせ場所に行かない理由には決してならないので、彼は待ち合わせの30分前(以前、御坂美琴と待ち合わせをしたときに彼女は30分前からいたらしいので、それに習うことにした)の10:00に水族館がある駅で下車して、待ち合わせ場所である駅前の広場の時計塔下へ向かっていた。
一方通行が先に到着してて、俺が居なかったらアイツそのまま帰っちゃいそうだしな。いやそもそも絶交されてて来てくれないかも。試してないけど実は着信拒否られてんのかも、などなど嫌な考えばかりが浮かぶ。
まあ、30分前に来たし間違っても一方通行が先にいる、なんてことはないだろうと思い駅の改札を抜けて大きめの広場に一歩踏み込む。
大きい時計塔はここからでもよく見えるし、実際多くの人の待ち合わせ場所となっているようで周りには10人ほどが立っているのだが
「っ、ふご、ごふっっ!」
思い切りむせるに至った。それは別に一方通行を見つけた、とかそういう理由ではなくて
「なんでアイツがここに…?」
彼の知人、御坂美琴がいたからである。いつもの制服姿ではなく休日スタイルで立っており、ゲコ太ストラップっぽいものをぷらぷらさせた鞄を肩にかけている。
これは見つかったら面倒臭そうなことになるな、と思ってそろりそろりとカニ足で彼女の視界から逃れようとしたのだが、突然
バチッ、ビリリッ、ズガガァァアン!
となぜか電撃の槍をドカンと一発放たれ慌てて右手でキャッチ!
「っ、ちょ、お前ーっ!コレ俺が気づいてなかったらどうすんだよ!?」
「アタシに気づいてたからアタシを避けようとしたんでしょ!こんのーーーーーーッ!」
美琴のおでこからビリビリバチバチと火花が散っているのがひどく恐ろしい。上条は右手を構えつつ
「だ、だって俺別に今日はお前と約束してなかっただろ……?」
「なっ、あた、アタシだって別にアンタに会いに来たんじゃないわよ!アタシは後輩とかその知り合いの子達と遊びに行く約束してて、待ち合わせしてるだけよ!」
「で?また30分前に来ちゃって待ちぼうけ、みたいな?」
「うううるさいわね!みんな色々忙しいんだからしょうがないでしょ!」
「………じゃあ30分前に来なけりゃいゴベビャアッ!?」
至近距離から放たれた雷撃に身がすくんで呂律が回らなくなる。舌が絡まりそうだ。
「ま、まぁ、それならなんだ、俺もちょっと友人………?と待ち合わせに来たクチだから、じゃなっ!」
「え、な、ちょっ!」
御坂に一方通行との邂逅を見らるわけにはいかないと思い、後は全て振り切って走り出す。時計塔から少しくらい離れたって許されるだろう。
とりあえず、御坂から身を隠すために時計塔を中心にぐるりと反対側へ回った。
わざわざこっち人気のない裏側まで来ないだろうと思ったのだが、そこで上条当麻は目を見張った。
「なっ、んな、ああああくせられー、たぁっ!?」
「………よォ、カミジョー」
一方通行が、いたのだった。