上条通行(短編)
□御坂保育園
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※御坂保育園は
御坂美琴…園長先生
シスターズ(数名)…保育士
一方通行、上条、禁書目録 etc…園児
年齢差、能力無視の保育園パロディ。
なんでもありな方向けに、どうぞ!
「はい、じゃあ今日はクッキーを焼くわよ!」
やる気まんまんな顔で園長先生、御坂美琴が園児たちの前で言い切った。すでにエプロンも装備済みだ。
いつも園児たちが走り回って遊ぶ、大きめなホールに今日は子供用長机が幾つも並べられている。
小麦粉、砂糖、たまごなど、クッキーの材料が並べられており、端の方のテーブルにはオーブンが数台置かれていて準備万端だ。
「ぃぃーーーっよっしゃぁーーーー!!!!クッキーだ!クッキーだ!」
両手を挙げて、バンザイバンザーイを繰り返すツンツン頭の園児の名前は上条当麻。うさぎ組のお調子者だ。
「今日はゲコ太型の、ゲコ太クッキーをみんなで作るんですよ、とミサカ10032号は胸の奥のワクワクドキドキな気持ちを滲ませつつ説明します」
人差し指をたてて、ふんふんと鼻息を荒くして保育士の御坂妹が言った。彼女もすでにエプロンを着ている。
「チッ………………………めんどくせェ。だいたいクッキーなンか、あますぎてくッてらンねェよ……」
頭をわしわしかきながら、お前は本当に幼稚園児かと言いたくなるセリフを吐いたのは、上条と同じくうさぎ組の一方通行。
しかし見た目は完全にちっこい園児で、水色のスモッグを着ている。
『あくせられーた』とかかれた黄色いチューリップの名札が胸元についているのがなんともかわいらしい。
「えーーっ!クッキーうまいぞ!しかも、やきたてはすっごくうまいんだぞ!」
大きな身振り手振りで一方通行にクッキーのおいしさを説明しようとした上条だったが
「…………………………ふン」
全く興味はありません、といった顔でそっぽを向かれてしまった。憤慨した上条は
「ん〜〜〜〜〜〜〜ッ!なんであくせられーたはてづくりクッキーのすばらしさをわかんねぇんだよっ!」
がっと、ついには一方通行に掴みかかってしまった。クッキークッキー、うるせェうるせェと大声をあげながら二人はころころ転がっていく。
「ちょっと!そこ!ちゃんとせんせーのおはなしきかなきゃダメでしょッ!」
だんッ!と足音を立てて、ついにうさぎ組のしっかり者、吹寄制理に二人は怒られてしまった。
「ちッ…………………さんしたのせいでおデコにおこられたじゃねェか……」
「あくせられーたがクッキーをいやがるのがいけないんだろ!」
「ちょっと!わたしはおでこじゃなくてふきよせせいりよーッ!!」
なんだとォ?なんだとーっ!と、またもや喧嘩が勃発しそうだったので見かねた御坂園長先生が
「まあまあ、一度自分で作ってみたら、きっと一方通行くんもクッキーが好きになるわよ。さっ、みんなでゲコ太クッキーを作りましょーっ!」
っエーーイ!とハイテンションで御坂園長先生が腕を挙げると、それに続き、っエーーイ!とシスターズも腕を挙げる。
「……ここのしょくいんはゲコたッてきくとまいかいこうなンよかよ…」
ぽそっと呟いた一方通行の声は周りの騒がしい声にすぐに消えてしまった。
「はい、じゃあ一方通行くんと、当麻くんと、打ち止めちゃんと、インデックスちゃんと、制理ちゃんは園長先生とクッキーを作るわよーっ!」
あらかじめ班分けされていたらしいが、なんでこんな最悪な班を作りやがったんだと一方通行は心中で毒づいていた。
「…………ブラックコーヒークッキーをつくるならきょうりょくしなくもねェ…」
「ブラックコーヒークッキーなんておいしくないわよ!?一方通行くんはこの歳で味覚がそんなに大人なのーっ!?」
美琴先生心配だなー、と呟きながらボウルと粉ふるいを引き寄せる。
「とりあえず、今日は基本のバタークッキーを作るのよ。ブラックコーヒーはこの保育園にはないから、今日は我慢してちょうだい?一方通行くん」
普通の保育園なら、先生たちの部屋にコーヒーメーカーがありそうなものだが如何せん職員がミサカミサカなせいで、冷蔵庫にはヤシの実サイダーなんかがぎっしり詰まっているのだ。
「………………チッ、しょォがねェなァ……」
しぶしぶー、といった顔で腕まくりを始める一方通行。しかし急にカッと目を開け
「…………………やるからには、マジでやっゾコラァ!!!」
「なんでそんなケンカ腰なのよーっ!?」
「スクラップけっていだァこむぎこヤロォーーーッ!」
「粉をふるってくれるのは嬉しいけどまずはみんなで手を洗いに行きましょう!?」
この班、本当にまともなクッキーができあがるのかなぁ、と不安に思いながら吹寄はため息をつきながら腕をまくっていた。