スマブラ

□おんぶ
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「あふぅ…つかれたぁ…」


乱闘を終え、リルはあくびをしながらフラフラ歩いてる。
立て続けに乱闘して疲れているのだ。

と、リルの目の前に都合よくソファがあった。


「ふにぁ〜…ベッド〜…」


にへらと笑みを浮かべたあと、リルは倒れ込むようにベッドだと思ってるソファにつっぷして寝転び、意識を飛ばした。




心地よい揺れに、リルは目を開けた。目の前にはソファの生地ではなく、緑の生地に金色の糸、それに暖かい人肌に香りがあった。
寝起きでぼやっとしてるリルは無意識にそれに顔を擦り付けた。


「リル、起きたのか?」

「……おとぉ…さん…?」


トキだ。
トキは背中にリルをおぶって長い廊下を歩いていた。
おぶられていることに気づいたリルは降りようとするも、トキがそれを許そうとしない。


「こーら、大人しくおぶられてろ。父さんが部屋まで連れてってあげるから」

「いいよぉ…私重いもん…」

「重くないって、なめるなよー?オレ元ファイターだし勇者やってたんだならこれくらいどうってことないさ」

「でも…」

「ちょっとくらい、父さんに甘えなって」

「……」


リルは大人しくおぶられることになった。

そういえば、こんなに父が近くにいるのは初めてかもしれない。物心つく頃にはすでに父はいなく、いないものだと思ってたリル。


「リルも大きくなったんだなぁ、こんなに重くなって」

「…むぅ、さっき重くないっていってたくせにぃ」

「ああそういう意味じゃなくて…ってリルくるしい…!」


リルはトキの首に回していた腕に力を入れる。ギブギブと大げさに苦しむ様子を見せるトキに、リルは隠れてクスリと笑い、腕の力を抜いた。


「はぁ…太ったとかそんなじゃなくて、オレがいない間にこんなに成長してたんだなぁって意味だよ」


よっ、と。トキはリルを抱えなおす。

リルとトワの物心つく前には、否、2人が生まれた時には既に父はいなかった。

お腹に双子を宿した母が攫われ、父は母と子を探すも途中力尽きて命を落とした。そして、死しても亡霊となっても家族を探しさまよい続けた。


「ごめんなぁ…絶対に守るって決めてたのに、2人きりにさせて。ダメな父さんだなぁ…」


ポツリと寂しげに呟くトキ。リルの方から父の顔など見えないが、きっと悲しそうな顔をしてるのだろうと思う。


「いい、よ…」


リルはトキの服をギュッと掴んだ。


「お父さんは、ずっと私達を探してくれてたんでしょ?それだけで十分だよ」


小さい頃、リルとトワは自分たちが捨てられたことを聞かされた。2人は両親にとっていらない存在なんだと思っていたが、そんなことなかった。


「それに、甘えられなかった分、今思いっきり甘えるからいいのっ。
これからはずっと一緒にいられるだもん」


旅をして初めて出会い、この世界で再会し、今こうして話していて分かった。

自分たちは、両親に愛されて生まれてきたのだ。と。


「そっ、か…」


ずびっと啜る音が聞こえる。リルは肩越しにトキの顔を覗き込み、ぎょっとした。


「お父さんなんで泣いてるのっ!?」

「だ、だってリルが嬉しいこと言ってくれるから…!〜くぅ、いい子に育ってくれてありがとう…!」

「わ、分かったから泣かないでよ〜!」


私のお父さんはここの元ファイターで時の勇者です。

すごく強いのに、私やおにぃ、お母さんのことになるとすぐ泣いちゃう涙もろいお父さんです。

だけど、私はそんなお父さんが大好きです!



おんぶ

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