スマブラ
□お母さん
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「あらトワ。ここ、服破けてるわ」
「え?…あ、ホントだ」
指摘された箇所を見ると刃物か何かで掠ったような穴が空いてた。乱闘の最中にでもついたんだろうな。
「ほら服脱いで。母さんが縫ってあげるわ」
この人は、オレの母さん。
…とは言うものの、こっちの世界に来て初めて会ったからあんまり実感湧かないんだけどな。
「い、いいって。自分でなんとかするから」
「まぁ裁縫出来ないのに?」
「うっ…でも、いいから」
確かに裁縫なんて細かい作業出来ない。最悪これくらい目立たないから放っておいても大丈夫だろう。
「こーら、何照れてるの」
「わっ」
突然、両頬の肉を引っ張られた。
「まったく…リルとは違って貴方は甘えるのが下手ねぇ」
「ちょ、痛いって…」
「ね、母さんにやらせて?
こんなことしかしてあげあれられないから」
オレより背の低い母さんは寂しそうに笑った。
オレは、素直に従うことにした。
「〜♪」
ソファに座り、母さんは歌を口ずさみながら服の修繕に取り掛かる。
オレは特にやることもなく、ただその作業を見ることにしたんだが…
正直、気まずい…!
話すこともないし、かといってやることないし…。
早く服の修繕終わってくれ!
〜♪
!
この歌…どこかで…
「な、なぁ…この歌って…」
「ん?」
自然と母さんに話しかけて、若干驚いてる。
この歌、どこかで聞いたことあるんだ。
「この歌はね、貴方とリルがお腹の中にいたとき、よく歌った歌よ」
「オレと、リルが生まれる前に…?」
「覚えてる?」
「…うん。なんとなく、雰囲気だけ」
「まぁホント?ふふっ、嬉しいわぁ」
そして母さんはまた歌い出した。
…そっか、この人はオレの母さんなんだ。
オレも、母さんも互いのことを何も知らない、繋がりなんてないと思ったけどあったんだ。
よく見てみれば、母さんの髪色はオレと同じだ。
…オレのは傷んでるからちょっとくすんですけど。
「♪」
「?」
母さんが修繕の手を止めて、オレに手招きする。手招きの後、ソファをポンポンと叩く。
隣に座れってことか?
オレは恐る恐る母さんの隣に座ると、ぐいっと頭に手を回された。
「うわっ」
ぐいっとそのままひかれ、上体が倒れた。
オレは母さんの膝の上に頭を乗せる形になった。
起き上がろうとするも、母さんの髪を撫でるその手つきが心地よくて出来なかった。
「遠慮なんてしなくていいの、目一杯甘えなさい。
私は貴方のお母さんなんだから」
「…、うん」
ジワリ、と目頭あたりが熱くなった。
お母さん
ずっと一緒にいてあげられなくてごめんなさい。
これからはずっと一緒にいられるから。
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