風のタクト・夢幻の砂時計

□人魚の恩返し
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≪はぁあああああああ?! オークションで人魚落札して金をパーにしたって!?!
 そんな嘘が通じるわけねえだろこの馬鹿! どうせそこらで昼寝してサイフでもすられたんだろ! 金がないなら自分で何とかしな!!!!≫



あの後テトラにお守りで連絡を取って金を工面してもらおうと思うも当然断られる。

一方的に通信を途絶えさせられ、お守りもただのお飾りになってしまった。

直接テトラの元に行こうにも小舟すらないし小舟を買う金もないからこの島から出る術もない。

それどころか今日食べるものを買う金もない。

オレは仕方なく、その日から船の貨物積みの仕事をして金を稼ぐことになった。




「ふぁ〜終わった終わった! ったく、あんなに働いたのにこれっぽっちかよ…」



一日の仕事を終えて夜。

早く金を貯めたいから宿代をケチって、誰にも邪魔されない岩の入り組んだ海辺で寝転んで休む。

労働自体は海賊船にいたころに比べれば全然マシだけど、労働に見合わず賃金は安い。

こんなんじゃ船を買うまで何年かかることか…だけどこの島でオレが出来そうな仕事なんてこれしかないから仕方ない。

ぐう、と腹の虫が鳴る。

そういえば夕飯もケチったんだ…空腹を紛らわすために早く寝ようと念じながら目を閉じる。

ザザー、ザザー…波の音を子守歌にオレは静かに眠りにつこうとする。

しかしその音と共に砂の上を這う音が聞こえる。

恐る恐る目を開けると…



「…って、キミぃ!?」

「!」



そこにはあの夜助けた人魚が砂浜にまで姿を現し腹這いになっていた。

突然オレが大きな声をあげるもんだから驚いて目を丸くしている。

オレは慌てて身体を起こして彼女の元に駆け寄る。






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