風のタクト・夢幻の砂時計
□人魚は…
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「! お前はあの時の…!」
「あ? …げっ」
昼間、船の積み荷作業中に、オークション会場でキアラをかけて落札競争を繰り広げたあの男と出会う。
男は背後にガードマンを二人つけて、ご立派な杖をついて如何にも金持ちですって感じの雰囲気を出す。
しかし顔は、オレのことを指さしてながらパクパクと口を開閉して阿保面ぬかしている。
「なぜ貴様のような男がワシの積み荷を抱えている?!」
「…あー、なに。この船アンタの船なのか? マジかー…」
オレがこの仕事をし始めてからずっと停泊しているこのバカでかい豪華な船はこの男のものらしい。
船に積むこの荷物も、やけに慎重に扱えというものばかりで凄く面倒だと思った。
「も、もしかしてっワシの荷物を盗む気だな!? 卑しい海賊め!!」
「おいおい変な言い掛かりつけるなよ…昼間からこんな堂々と盗む訳ないだろう。というかオレはそんな姑息なことはしない」
「ふんっ海賊の言うことなど信用ならんわ。ただの積み荷運びならまあいい、賃金に見合う働きをするんだな」
「言われなくとも」
そう言って男はカードマンを引き連れ船着き場を出て行こうとする。
もうこんな面倒な奴には二度と会いたくないなとその背中を横目に仕事に戻ろうとするも男はああ、と言葉を漏らして止まった。
「そうだ…貴様、あの人魚はどうしたのだ?」
「…どうしようが、オレの勝手だろ?」
「ふっ…まあそうだな。野暮なことを聞いたな」
…なにかニヤついた感じの様子の男はそう言い残して言ってしまった。
一体何を考えてるんだ、これは…警戒しておかなきゃいけないな。
頭にそれを置いて、オレは仕事にとりかかった。
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