彩雲国物語
□光る雪は終焉を知っていた
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そんなはずはない。私は己の耳を疑った。あの清雅が死ぬはずない。彼はいつだって前を見据えていて何もかも計算していて、危険は絶対に犯さない。
危険なことはいつも誰かに押し付けていた。いくら自分の評価が下がろうとも命を確実に落とす仕事だけは絶対に引き受けなかった。私との唯一の約束だったから。
なのに清雅は引き受けてしまった。私との約束を破った。彼が私との約束を破った。それはつまり。彼が私に興味が無くなった。そういうことだ。
清雅は私のことを愛してくれていなかったのか。いつから?どうして?
浮かぶ疑問はいくつもあるのに答えは一つも浮かばない。私が彼の興味を損なうようなことをした記憶はない。なのに何故?
私は彼のことを誰よりも愛していた。狂おしいほど愛していた。彼もまた私のことを愛してくれていた筈なのに。
私は様々な人に清雅の死因を尋ね回った。だけど、誰も口を割ってはくれなかった。彼が携わっていた事件の当事者にでさえも聞いた。
だけど、誰一人とて何も教えてくれなかった。
私は諦めず、何度も何度も聞き回り幾日か経った頃。御史台長官、葵皇毅殿が教えてくださった。
清雅は任務で亡くなった訳ではなく、過去に蹴落とした御史に暗殺されたと。
その御史はずっと清雅暗殺を企んでいてやっと実行できた。と尋問で言ったそうだ。
清雅がなくなった日の前の日。例年と比べては早い雪が降っていた。あの日、積もった雪に太陽が反射して清雅の視界を奪った。そして、清雅の命をも奪った。
―光る雪は終焉を知っていた―
End