短編集

□叶わない恋、幻想という恋
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恭ちゃん、恭ちゃん…
小さい頃から追いかけてた背中

今は遠くなってしまって、もう話しさえもしない
話さない…じゃなくて私が避けている
恭ちゃんは皆から怖がられてるから近づけない

ああ、私の勇気ってこんなになかった?
好きな人に想いさえも伝えられないなんて嫌だよ

「うわー、風紀委員長が校門に立ってるよ…」
「もう少し経ってから帰ろうっと!」

友達の日常的な声

そう、恭ちゃんに会ったら噛み殺されちゃうから
近づけない、そして私も近づけない

でもね、本当は凄く優しいの…
小さい頃だけど転んだときは消毒してくれて、
そんなに背は変わらなかったのに背負って家に送ってくれた

まあ、中学になってからは全然関わらなくなっちゃったけどね
もう三年生で今年度で卒業…
だからそれまでに気持ちを伝えたかった

「恭ちゃん…」

私の声は教室の雑音で消えてしまう
少しだけでもその呟きが、聞こえたらと
恭ちゃんに恋をするには余程の覚悟がいるようだ

「He liked…」

もうこれで終わりにする
さようなら、私の恋
好きなんて一瞬の幻想なんだ…

片想いなんて最初から叶わない



恋なんてしない方が幸せなんだよ?

でもね、やっぱり好きなんだ




叶わない恋、幻想という恋

(好きでした、恭ちゃん…)
(まったく、いつまで待たせる気なの?)




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