tennis
□要は確認したいだけ
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最近俺には悩みがあります
「あはは!ブンちゃん先輩面白すぎー!!」
「へんふぁいふぇひはろぃ?」
「"天才的だろぃ?"じゃと」
「天才ってよりむしろハムスター的」
部活後、真田副部長に遅刻した罰として一人コート整備をし終えてかなり疲労が溜まり、フラフラしながらなんとか部室に辿り着けば、俺がここ数ヶ月、部活をも二の次にして口説き落とした愛しい愛しい彼女が自称天才と詐欺師に挟まれ楽しそうに会話していたのが目に入った
「ちょ!何してんスか!?」
慌てて名無しさんの元に向かえば、当の本人はのほほんとしながら「あー赤也、お疲れ〜」なんて笑いながら言ってくる。…ちくしょう。可愛い!
「迎えに来たらまだ赤也練習してるってにおー先輩に聞いてさ。コート行こうか迷ったんだけど、先輩達がここで待ってればいいって言ってくれて…」
「おう!だからお前が来るまで遊んでたんだよ」
ねーっ!と仲良く首を傾げる自称天才と俺の彼女。
なんだよそれ…。すっげー腹立つ
「ブンちゃん先輩!さっきのハム顔もっかいやってください!!写メるんで」
「えー、どうせならカッコイイ姿の俺撮れよ」
「ブンちゃん先輩はいつもカッコイイですよ!だからさっきのハム顔やってください」
「しょーがねぇなー」
は、なに、カッコイイ…?
「名無しさん、ブンちゃんより俺のがカッコイイじゃろ」
「んー、におー先輩も人気ありますよー」
「それはつまりカッコイイ…と?」
「まぁ、そーゆー事になりますねぇ」
ちょっと待て待て名無しさんちゃんやい。お前、俺にだってカッコイイなんて言ってくれた事ねぇじゃん!
彼氏には言わないで他の男には言うのかよ!?そりゃねーだろ!
「でも、一番は幸村先輩ですね!!あの人はなんてゆーか、芸術ですね!」
はぁー!?一番って…一番!?え、俺が一番じゃないの?
「あーなるほどな〜。幸村くん相手なら勝てねぇや」
「プリッ」
バン!!
「!?あ、赤也…?」
もー駄目だ。聞いちゃいらんねぇ…つーかさ、お前の彼氏って俺だろ?なのに他の男とイチャイチャ、イチャイチャ…
「帰るぞ」
「え、わ…!」
イライラしながら強引に名無しさんの手を引き部室を出る。先輩に挨拶とかもーいいし。
とにかく今はここから出たい。
「ちょ、赤也?どうしたの?」
「……お前さ、先輩達の事どー思ってんの?」
「どう…って、良い先輩だと思ってるよ?」
良い先輩かよ
「じゃあ俺は?」
「は?」
「俺の事はどー思ってんの」
こんな事聞くの初めてかもしんねぇ。告白したのも俺からだし、名無しさんってあんまりそういう事言わねーし。
正門前で手を繋いだまま向かい合う
真っ直ぐ彼女を見る俺とは対照的に目を泳がせながら俯く名無しさんは黙ったまま
「…なぁ、黙ってないでなんとか言えよ」
強引に顔を上げさせれば…
「っ!?」
耳まで真っ赤にさせた名無しさんが困ったような顔でこっちを見上げる
「え、は…?」
こんな顔初めて見た…
「ちょ、あんま見ないで」
そう言ってまた俯こうとした顔を手を添えてストップさせる
「なぁ、その顔…俺、期待していいの?」
真っ赤なまま見つめる彼女を俺も真面目に見つめ返す。
「……!え、あ、赤也は…。その、カッコイイっていうか……えと…」
「うん」
「先輩達は…ただカッコイイって思うだけで、赤也は…その、見てるとドキドキして、先輩達とは違うっていうか…」
「要は?」
「……好きって事、です」
本当は赤也が一番カッコイイよ。って言ってくれりゃーそれで良かったんだけど…
必死になって自分の気持ちを言った彼女がすげー愛しく感じた
要は確認したいだけ
(恥ずかしすぎる…!!)
(たまにはこーゆーのもいいかもしんねー)