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□帰り道、猫と
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「猫だ」

「あ?」


帰り道、ふと立ち止まった名無しさんにつられて俺も足を止める

じーっと何かを見つめる彼女の先には薄い茶色の毛をした猫


「美人さんだね」

「猫の美人とかあるんか?」

「あるよー。」


素朴な疑問を投げかければ笑いながらねぇー?と猫に話かける名無しさん


あまり警戒心がないのか、話かけられた猫はテトテトと名無しさんに近付き擦り寄ってきた


「おぉ…!懐いた!」

「懐いたってなんやねん」

「かわいーなぁ。」

なでなでと猫の頭を撫でればそいつは甘えるようにニャーと鳴く


「……」


なんやろ…この猫、あいつに似てるような気ぃすんねんけど…


しゃがみ込んだ名無しさんが猫を抱き上げ可愛がれば猫は嬉しそうに手を舐めたり、ニャーと甘えた声を上げたりしていた



「ねー、ねー、ユウジー」

「あ?」


「この猫さ…」

言いながら猫を抱き上げたまま俺の方にズイッと近付け


「白石君に似てない?」

と言い放った



「それは……」



目の前でぶらり状態の猫は黙ったまま俺を見ている


色素の薄い茶色の毛、スラリと伸びたしなやかな肢体、サラサラの毛並み、キリッとした瞳…


「白石そっくりやな」


名無しさんに懐く所もな、と皮肉を混ぜて言えば名無しさんは猫を抱っこしたまま、猫にヤキモチ?なんて言って立ち上がった


「アホか。なんで俺が猫にヤキモチ妬かなアカンねん」


「じゃー白石君にヤキモチか」


「……」

あながち間違いではない


黙った俺に肯定ととったのか、名無しさんは猫を下ろすとバイバーイと言って歩きはじめた


「ユウジー」


「なんや」


「手、繋ご?」


差し出された手。さっきまで猫と戯れとった手


「……今日だけやからな」


別に嫉妬したからやない。名無しさんが猫ばっか可愛いがってたからとか、そんなんやない


「素直じゃないな〜」


「うっさい」


あの猫が白石に似てたとか…そんなんや、ない…


「心配しなくても、私はユウジだけだよ」

「誰も聞いてへんわ」


「なら私の独り言ー。私は学校のアイドル、聖書白石君より、モノマネ王子の一氏ユウジ君のが好きですー」


「……、アホか。」



「俺も、好きや」


極小さな声で呟いた


握った手が少し湿った…アカンわ


「小春チャンに明日自慢しよーっと」


にひっと悪戯っぽく笑った彼女にまた心惹かれた













帰り道、猫と









(小春チャーン、聞いてー?昨日ユウジがねー)


(名無しさんちゃーん!今日も可愛ええなぁー)


(白石!名無しさんに触んな!!あと名無しさん!一々小春に報告すんな!!)
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