●○艶モノ※壱拾八禁※○●
□性悪
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気付いたときには彼女の細く白い手首を掴んでいた
握った手は力の加減も忘れ
賑やかな往来の人の波を縫うように、足早に人気の無い場所を目指す
状況が飲み込めず、驚きを隠せずにいる○○はしきりに私の偽名を呼んでいる
けれどそれに応えてやる余裕などなかった
今日は彼女と逢う約束はしていない
とある用件で、島原には来ていたのだが・・・
揚屋を出た先で、人目もはばからず○○が男と抱擁する姿を見てしまった
彼女のことだ、上手くかわすことができず
成り行きのままそうなってしまったことくらい理解できる
それでも○○のこととなると、どうにも頭に血が昇って冷静さを欠いてしまう
強引に連れ込んだ空き家の暗がり
奥の部屋まで我慢がならず、扉に閂(かんぬき)を掛けてすぐに
○○を掻き抱き、艶やかな着物の裾を乱暴にたくしあげた
「きゃっ…」
『しぃ…』
小さく上がった悲鳴を窘め、露になった秘裂を指先でなぞる
乾いていることに安堵し、性急な潤いを求め
濃厚な口付けを交わしながら、帯を解くのも煩わしく、無理矢理に胸の合わせ目を割いた
「俊太郎さまっ!…こんなところで…ゃ…」
今更抗議の声など聞き入れられる筈もなく
ふるん、と顔を出した、たわわな膨らみを片手で揉みしだき
少し大人しくしてもらうため、もう片方の手の指を彼女の口腔に押し入れる
恐々と指に絡みついてくるあどけない舌
”飴玉を転がすようにしたらええ”
いつか教えた行為を忠実にする○○が可愛くて仕方ない
『上手や…』
誉めてやると、悦びと羞恥を混ぜたような、なんとも艶っぽい表情を○○は浮かべた
・・・その顔、あかん・・・
今すぐ滅茶苦茶に抱いてしまいたい欲をぐっと堪える
月明かりを浴びて白磁色に浮かび上がる柔肌には、数日前の私の唇印が薄く残っていた
消えそうな印にもう一度、色を甦らせる
もちりとした柔肌に夢中になっていると、掌の中ではっきりと主張してくる其れ
「……興奮、してはる?」
悶える彼女に品のない笑みを向けた
自分でも嫌な男だと思った
けれど、自身ではどうにもできないこの稚拙な心情は、○○を抱き尽くすまで治まらない
固さを持った蕾に貪りつく
舌でつつく度、○○は鼻にかかったか細い声をあげながら、口腔の指に柔く歯を立てる
お返しにとばかりに、口に含んだ蕾を甘噛みして返すと
ぴくッ…身を跳ねさせながら可愛らしい鳴き声を上げる
こちらが与える刺激すべてに反応を示してくれるのがまた堪らない
押し入れた指から彼女の律液はこちらの肘まで伝ってきている
そろそろ頃合いかと、口腔から指を引き出した
「…ぁっ、はあっ、あっ、しゅ、俊太郎、さま…どうしたん…っあぁ…」
すかさず湿り始めているであろう蜜道に滑り込ませる
『どうしようもなく…業突張りなわてを…許しておくれやす…』
戸惑いながらも、こんな悋気深い私を健気に受け入れようとしてくれる○○の耳元で
口先だけの謝罪をして、そのまま目の前の美味しそうな耳朶に齧りつく
わざと水音を立てながら、複雑な耳の窪みを尖らせた舌先でなぞる
丁寧に隅々まで
「やぁぁ、だめぇ…」
腰が抜けそうになる彼女の腰を片腕で支えながら、蜜道と耳介を同時に攻め続けた
暫くの後――
震える細い腕を私の首に巻き付け、必死に足を立たせようとする○○から
ゆっくりと体を離し、指を引き抜く
こちらを見つめてくる光惚の眼差しがたまらなく後ろ髪を引くけれど・・・
涼しい顔をして、乱れた衿元を合わせ直し、裾も綺麗に直してやる
「…俊太郎さま…?」
『うん?』
「あの…」
言いたいことは分かる
分かってわざとしているのだから
やはり、私は性悪男だ
自嘲を浮かべながら、乱れた自分の身形も整え、紅潮した○○の頬をひと撫でする
『置屋までお送りしまひょ…』
「……」
そして、閂に掛けようとした手は白く小さな手に制される
『……○○はん?』
わざとらしく首を傾げてみせた
「ぁ、の………帰っちゃうんです、か…」
○○の精一杯の言葉
だけど、それだけでは満足できない
急かさず次の言葉を待つ
私の手を握った手とは反対の手で、自分の襟元をぎゅっと握り締め
恥ずかしげに視線をさ迷わせている仕草がまた男を煽る
それに負けないように必死に己と闘うが、少しずつ促すように身体が動いてしまうのが止められない
握られた手を握り返し、指を絡めながら、もう一方の手で顎を捉え上向かせ視線を絡める
『言うて…そのかいらしい口で、聞かせておくれやす……』
「……」
『……』
その瞳を見つめ続け
潤む瞳に負けてはいけない、再び己に言い聞かせる
すぐそこに楽しそうな男女の話し声を聞きながら
そして暫くの葛藤の後、○○は恥ずかしげに口を開く・・・
「……俊太郎さまが……欲しい、です…きゃっ」
玄関の上がり口の板の間に彼女を組み敷く
その言葉を待っていた
元より、このまま帰れないのは私の方なのだから
ただ、今宵は○○から私を求めて欲しかった
綺麗に直した衿も裾も再び乱れ崩れ
往来の喧騒にその矯声を隠すように
苦しそうに必死に声を殺して喘ぐ愛しい娘の小さな身体を
嫉妬の塊と化し、醜く膨れ上がった自身で壊れてしまいそうなほどに一心不乱に貫く
「…ぁっ、はぁっ…しゅん、たろ…さま……そんなっ、だっめっ……」
『優しゅう…ッ、してやれんで、すんまへん…っ』
○○と他の男が座敷に居ることを想像するだけでどうにかなりそうで
○○が他の男と指先ひとつ触れているだけで、気が狂いそうだった
『○○は…わての女や…ッ…』
「ぁんっ……私のっ、全部、俊太郎さまのっ、ものです……」
『あぁ…ッ、知っとるよ…』
二人の熱が混じり合って蕩けていく快楽に、徐々に混濁する意識が支離滅裂な言葉を並べるが
あくまで表情は余裕の微笑
「俊太郎さまだけっ…ぁっ、ゃぁ…だめっそれ!…壊れちゃう!」
『壊れてしもたらええ…ッ…せやけど、あんさんをこないにしてええのは、わてだけ……
○○を滅茶滅茶に壊してええのは、わてだけや……ぅッ…』
無意識に吐き出してしまった押し隠したはずの心情
びくんッ…身を震わせながら大きく反り返る○○の腰を強く抱き寄せ
隙間なく密着したそこへ、滾る熱をすべて注ぎ込んだ
おわり☆ミ