●○連続篇○●

□保健室の俊太郎
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<保健室の俊太郎>



やっぱり、風邪かなあ・・・・・




朝起きた時から少しだるさはあったけど。



なんだか寒気もしてきたし。



頭もぼーっとする。





ピピッ





「……37.1」




やっぱり・・・・・。





・・・・早退出来る条件はギリクリア。



坂本先生に言って帰っちゃおうかな〜。



古高先生もいないみたいだし・・・・。




「はあ・・・・」



保健室の丸椅子から、だるさで重い腰を上げる。






――すると・・・




「どないしはった?」



「!!!」




振り返ると、そこには校内だけでなく、



巷でもちょっとした有名人。



イケメン過ぎる先生で名が知れた、我が校の保健室の先生。



古高先生が立っていた。




・・・・いつの間に!?




その容姿と、教諭には必要のない色気に、はんなりとした京訛り。



おまけに、誰にでも分け隔てなく接する優しいい性格。



当然、用もないのに保健室に女子生徒が集う。



だから、



今は担任の先生に、体調が悪いことに太鼓判を押してもらって、



許可書を貰わないと保健室には入れない。




「…あっ、少し熱っぽくて…来たんですけど……

先生いなかったから…勝手に体温計、借りてました……」



よく保健室を利用する私には、先生とはもう顔馴染みなのに・・・



二人きりなことに変に緊張してしまう。



それは、先生がイケメンだからだけじゃない気がする。




「…………」



すると先生は、無言のままこちらに近付いてきて・・・・



私のおでこに手を当てる。



たったそれだけのことなのに、



先生に触れられただけで、私の心臓はばくばく暴れ出す。




「……うん。少ぅし熱いな。

坂本先生にはわてから言うとくから、そこのベッドで寝とき」



「……でも、微熱だし…大丈夫です。私、授業に戻ります……」



「あかん。……そうやって無理して後で高熱出すんやから。

わての言う通り大人しゅうしとき」



そう言うと、先生は私の耳元に唇を寄せて、



艶めかしい低い声で呟く。



「……あんさんの体のことは……わてが一番よぉ知っとる……」




きっと、私がよく熱を出したりすることを言ってるんだと思うけど・・・・



古高先生じゃなかったら、その発言、犯罪だよ・・・・。




そんな先生の色気に中てられて、



もう熱なのか、先生のせいなのか分からないくらいに、



体が熱くなって、頭がくらくらしてくる。



風邪の熱に加え、羞恥で更に頬を火照らせながら、



先生に言われた通り、ふらふらとベッドへ向かう。





―すると、あることに気付く。




・・・・あれ?今日はいない・・・・。



いつもは、隣のベッドに、隣のクラスの男の子がいた。



彼も私と同じでよく熱を出す子みたいだった。



思えば、私が保健室でベッドを借りる時は大抵、彼も隣で寝ていた。



だから・・・・



古高先生と二人きりになるのは・・・・初めてかも!?



そう思った途端、治まりかけた鼓動が再び慌しくなる。





少し緊張しながら横になると、



先生はベッドの端に腰かけ、布団をかけてくれた。



私のおでこにかかった前髪を、



先生のしなやかな指先がそっと整える。




「あんさんは季節の変わり目によう熱出しはるなあ」





先生の言う通り、私はよく熱を出す子で。



微熱だからと無理をしては、翌日に高熱を出して、



学校を休むことがよくあった。



入学当初から保健室の常連でもあった私は、



他の生徒よりも古高先生と接する機会は多くて。



だからもう、先生とは友達?のような感覚・・・・・。



だけど、心のどこかに



それだけじゃない感情を、自分で抑えている気がしていた。



それに・・・・・



古高先生の私に対する態度も、



他の子と微妙に違うように感じていた。




自惚れかもしれないけれど・・・・・。




だから、私はどっかで期待してしまっていた・・・・。






「おかげであんさんとこうして二人きりで居れるし…悪いことやないな」



「……笑ごとじゃないし……」



と、楽しそうに笑う彼に口を尖らせつつ、



先生と同じ思いの心の中では、そんな自分の体質に感謝していた。




「熱は?」



「37.1でした」



「吐き気は?」



「大丈夫です」



「寒ない?」



「……少し…寒気はします」



「ほんなら温かこうせなあかんね……」




そう言ったかと思うと、おもむろに布団を持ち上げて・・・・



その隙間に、先生はするりと体を滑り込ませてきた。



「!!!!!ちょっ、先生!何して…っ」



「何て。あんさんが寒い言わはるから」



「…だからって……もし誰か来たら……」



「心配あらへん。誰かが来る時は内線が鳴る」



「……」



「…それに、わてとあんさんの仲やろ?」




なんだかよくわからない理由を述べられて、



結局先生に上手いこと言いくるめられ、



そのまま彼の心地よい温もりに包まれながら・・・



私は、いつの間にか眠ってしまった。








・・・・・一時間後・・・・・。




「……ん」




体が汗ばむ気持ち悪さに目を覚ます。




「おはようさん」




「ぁ……」




目を覚ますと、眠りに落ちた時のまま、



私は、古高先生の腕に抱かれていた。



今更恥ずかしくなって、先生の顔を見ることができず、



体中にじわじわと汗が滲む。





「気分はどう?」




「……あ…すごく熱いです……」




首回りは、しっとりと汗ばんでいた。




「熱が上がりきったみたいやね。そしたら、今度は冷やさな」




すると、ブラウスのボタンに手がかかる。




「!!先生っ!!なっ……」



慌ててブラウスと一緒に彼の手を掴む。



「何て。暑いんやろう?」



デジャブのようなやり取りをしながら、



イケナイことだと思うのに、



その妖艶な瞳に見据えられてしまうと、抵抗できない自分がいる。




上から三つほどボタンが外され、



暑苦しく首にまとわりついていた襟元が緩まる。



少しでも動いたらブラが見えてしまいそう・・・・・・。



そのスリル感に、また心臓が煩く鳴り始める。




すると、四つ目のボタンに手がかかった時・・・・



ぴたりと先生の動きが止まる。











「……それはあかんな」




「えっ?」



その小さ過ぎる呟きに、思わず聞き返すけれど、



先生はそれには答えずに、ベッドを出行ってしまった。





・・・・なに?さっきの先生のあの瞳・・・・・・。



見つめられた瞬間、催眠術にでもかかったように、



体の自由を奪われてしまったようだった。




・・・・・・熱のせい?・・・・・頭が混乱する。





そうして、先生は氷枕とタオルを持って戻ってきた。




何事もなかったかのように、私にタオルを差し出す。




「これで汗拭きぃ」



「……あ…ありがとうございます」






私はまだドキドキが治まらなくて、



先生が渡してくれたタオルを見つめたまま、暫くボーっとしてしまう。




「……?自分でするんはだるい?」




端整な顔に覗き込まれ、心臓がどくんと跳ね上がる。




「……ほんなら……」



「だっ、大丈夫です!…じ、自分で出来ます」



先生が私の手から取り上げようとするタオルを、



指先にぐっと力を入れて渡さないようにする。




「……そう?」




すると、先生はくすくす笑いながら、



シャッとカーテンを閉めて出ていった。




彼が手をかけて外さなかった、四つ目のボタンから外し、



ためらいがちにブラウスを脱ぐ。




布一枚隔てた先に先生がいる・・・・・。



そう思うと、どうしても心臓が黙っていない。



そんな私に追い打ちをかけるように



カーテンの向こうから声がかかる。




「……背中拭ける?」




「大丈夫ですっ!」





・・・・・・絶対からかって楽しんでる・・・・・・




また口を尖らせながらも、



私の忙しない鼓動が治まることはなかった。




おわり?☆ミ
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