短編集

□銀時の子育て
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「坂田さんにお届け物でーす。坂田さーん!」



とある春の日。我が家に段ボール箱が届いた。
宛名は「坂田金時」。となると差出人はアイツしかいない。

辰馬の奴、連絡もなしに何を送ってきたんだ?
早速開梱した神楽が、緩衝材に埋もれた中身を取り出して見せた。



「銀ちゃん見て見て!デッカイ卵アル!」


ほんとにアイツ、何を送ってきたんだよ…





*




それは一尺ほどもある大きな卵。


「わは♪卵かけご飯がお腹いっぱい食べられるネ」
「やべ、醤油切らしてるんだった。新八、買って来い」

「いや、二人ともちょっと待ってください。これ、クール便じゃなくてホット便で届いたんですよ?」



あぁそうか



「それなら、ゆで卵になってるアルね」
「やべ、塩も無くなりそうなんだ。新八、頼んだ」

「だからそうじゃなくて!坂本さんからの手紙を読んでください」



新八から手渡された手紙。



“コイツを頼んだ。大きくなった頃に迎えに行きます。”



「この卵、まだ大きくなるアルか?!」
「よし、今からじっくりめんつゆに漬けて宇宙最大の煮卵を作るぞ」

「いい加減、発想を食べ物から離してください。これきっと、孵化させて育てろってことですよ」
「わは♪これ生きてるアルか?!」



ふざけたこと言ってんじゃねぇぞオイ



「バカたれ。デカい卵から産まれるのはデカい鳥に決まってるだろ。
うちにはそんなもん飼う余裕は無ェんだよ。俺たちが食いッパぐれちまう。
だったら先にコイツを食ろうてやるわ。神楽、醤油でも塩でも良いから買って来い」

「嫌アル。私がこの子を育てるネ。銀ちゃんには頼らないヨ」



お前!さっきまで食う気満々だったくせに急に母性に目覚めやがって!



「おーヨチヨチ。寒くないでチュかー?」



この時から神楽は抱っこ紐で卵を腹にくくり付け、肌身離さず持ち歩くようになった。


「銀ちゃん見て見て!イースターエッグ」


ペイントしてみたり


「汚れちゃいまちたねー」


一緒に風呂に入ってみたり。


朝も昼も夜も暖め続けた。



*



「全然、まったく、まんじりとも孵らないアル」


なんの変化もない卵に飽きて一週間で放棄した。


「定春、私遊びに行ってくるから代わりに暖めてヨ」
「ワン!ハッハッハッ♪」


卵を託された定春。
目を爛々と輝かせ、卵を転がしてボール遊びを始めた



「ハッハッハッ♪」


ゴロ…ゴロ…



まぁ…丁度良いか。卵は適度に回転させた方が良いらしいし。




「ハッハッハッ♪」


ゴロゴロゴロゴロー




……適度?




「ハッハッハッ♪」


ゴロゴロゴロゴロゴロ―――ゴン!



「ちょっと待て!定春お座り!それよこせ!」
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