小雑貨

□出会いの日
1ページ/3ページ

「やっとこの航海という名の歴史的な偉業が始まるんだコロン♪」
「ああそうだな、わかったからそのあほ面民衆に向けるんじゃない、太陽提督」
「むー・・・」
上司二人の痴話話をぼんやり聞きながら、俺は空を見上げた。
(・・・ああ、ここにたどりつくまでいろんなことがあったな)
俺は目を閉じ、ゆっくりとこれまでのことを思い出した。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
うす汚い街の中、ねずみがちょろちょろ動き回るようなひどい所で俺は育った。
とりえといえば、少し料理学校に弟子入りしていた時期があったから少し料理が出来る、ということぐらい。
「なにしけたツラしてんだよ」
のぞきこんできたのは首飾りが印象的な褐色の肌をした青年だった。
「…別に。飯何にするか考えてただけだ」
「え、今日お前が飯作ってくれるんだ!」
またそばに寄ってきたのは白い髪の女のような顔をした青年。
「ん、そうか」
白髪をおさえつけたのは茶色交じりの髪の毛をした、長髪の青年。
「ちっと待ってろ、材料見つくろってくる」
「ん」
向かったのはいつもの残飯廃棄箱だった。
金持ちはまだ使えそうな生肉や野菜さえ捨てるので俺たちは食糧に困らなかった。
(野菜が多いから今日は野菜スープだな)
そんなことを考えていると、後ろから足音が聞こえた。
振り向くと、泣きそうな顔をした金持ちそうな子供が立っていた。
ここらでは真っ先に狙われる。
「おい、お前」
声をかけると怯えながらこちらを振り向いた。
「どこの子だ」
「ジ・・・ジェノバの、港の近く」
怯えながらいう、かわいいと感じた。
服のポッケをあさると、この前作った菓子が袋に入っていた。
「・・・これ、食うか」
「ふえ?あ、うん!」
ポリポリ食べ始め、飲み込むなり言った、
「これ、すっげーおいしいよ!作ったの君?」
満面の笑顔でいうものだからこちらも顔がゆるむ。
「よくここに来るのか?」
「うん、でも今日は迷っちゃって」
「明日はもっと早くに来いよ、待ってるからな」
●●
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ